令和8年度診療報酬改定が決定!─改定率3.09%の内訳を徹底解説【前編】

2026年2月21日土曜日

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令和8年度診療報酬改定が決定!─改定率3.09%の内訳を徹底解説【前編】

はじめに

2026年2月13日、中央社会保険医療協議会(中医協)から令和8年度(2026年度)診療報酬改定の答申が示されました。本体改定率は3.09%と、近年稀に見る大幅なプラス改定となっています。しかし、この数字だけで一喜一憂してはいけません。改定率の内訳を理解することが、自施設の経営判断に不可欠です。

本記事では、この令和8年度改定の全体像を、具体的な数値例を交えながら分かりやすく解説します。医師・看護管理者・事務職など、どの職種の方にも理解していただけるよう努めました。


改定率の全体像:3.09%の中身は何か

本体改定率 3.09% の内訳

改定率が「3.09%」と聞くと、全医療機関の診療報酬が一律3.09%上がると思われるかもしれません。しかし、実際はそう単純ではありません。この3.09%は、以下の3つの要素から構成されています。

本体改定率 = 賃上げ対応(1.70%) + 物価対応(1.29%) + その他の政策改定(0.10%)

賃上げ対応:1.70%

医療現場の人材確保が急務となる中、職員の処遇改善に充てられる改定幅です。これは改定全体の約55%を占める、最大の要因です。診療報酬という「報酬」という名称の通り、医療機関が職員に良い待遇を提供できるよう、制度設計されています。

具体例を挙げます。200床の地域中核病院で、現在の年間診療報酬が15億円だとしましょう。この場合、賃上げ対応分1.70%は約2,550万円の増収に相当します。この額が、職員の基本給引上げやボーナス増額の原資となるわけです。

💡 具体例:200床地域中核病院

  • 現在の年間診療報酬:約15億円
  • 賃上げ対応分(1.70%)による増収:約2,550万円
  • この額が職員の待遇改善の原資に

物価対応:1.29%

医療機関の運営に必要な医療材料費、医薬品費、光熱水費、食費といった物価上昇に対する対応です。さらに細分化すると、以下のように分けられます。

  • 一般的な物価対応:0.76%
  • 食費・光熱水費等の生活関連物価対応:0.09%
  • その他物価対応:0.44%

前出の200床病院で考えると、物価対応分1.29%は約1,935万円の増収です。消費税率据え置きや、アルコール除菌製品などの医療材料費高騰への対応が、この部分に含まれています。

その他政策改定:0.10%

医療の高度化や医療機能の分化推進など、政策的な観点から必要な改定が含まれます。これは相対的に小さな数字に見えますが、特定の施設基準を満たす医療機関には、より大きなインパクトを持つ場合があります。


全体改定率(ネット)2.22%とは何か

ここで重要な別の指標が出てきます。それが「全体改定率」または「ネット改定率」です。新聞報道などでは「ネット2.22%」と表記されることもあります。

ネット改定率 = 本体改定率(3.09%) + 薬価等改定(-0.87%)

診療報酬には「本体」と「薬価等」という2つの柱があります。医療機関が提供する診療行為や看護などは「本体」で評価され、医薬品や医療機器・材料については「薬価等」で評価されます。令和8年度改定では、本体は3.09%上昇する一方、薬価は0.87%引き下げられます。結果として、全体では2.22%の改定となるわけです。

具体的な経営影響の計算

具体例で考えると、前出の200床病院(年間診療報酬15億円)の場合:

📊 200床病院の改定影響額(年間)

  • 本体改定による増収:約4,635万円
  • 薬価等改定による減収:△1,305万円
  • ネット増収:約3,330万円

薬価引き下げは後発医薬品の普及や、既収載医薬品の価格調整によるもので、医療機関の経営努力次第で負担を軽減することも可能です。例えば、後発医薬品の採用比率を高める使用医薬品の切り替えを検討するなど、事前対策が重要になります。


2026年度と2027年度で改定率が異なる理由

ここから、よくご質問をいただくポイントです。実は、3.09%という改定率は「2年間の平均値」です。実際の施行では以下のように段階的に変わります。

📅 段階的改定スケジュール

  • 2026年度(6月1日~2027年3月31日):2.41%
  • 2027年度(2027年4月1日~):3.77%

なぜこのような段階的な改定を採用したのでしょうか。それは、医療現場の急激な環境変化への対応と、制度の持続可能性を両立させるためです。

段階的改定が採用された背景

人材不足への緊急対応

医療現場、特に看護職員やコメディカルスタッフの不足が深刻化しています。2026年度から賃上げによる処遇改善を早期に実施することで、採用競争力を高めるねらいがあります。

物価上昇への段階的対応

2026年度は比較的抑制的に、2027年度でより大きな改定幅を確保することで、医療機関の経営計画立案を支援する意図があります。

診療報酬改定の施行スケジュール変更

従来は診療報酬改定が4月1日に施行されていましたが、令和8年度から6月1日施行に変更されました。その理由は、詳細な施設基準や診療報酬点数表の準備期間を十分確保することにあります。この6月施行に合わせて、段階的改定が導入されたわけです。

医療機関種別による経営シミュレーション例

100床急性期病院の場合

  • 年間診療報酬現在:約7億5,000万円(推定)
  • 2026年度改定による増収:約1,808万円(2.41%)
  • 2027年度改定による増収:約2,827万円(3.77%)
  • 2年間の累積増収:約4,635万円

診療所(内科・小児科混合型50患者/日)の場合

  • 年間診療報酬現在:約1億2,000万円(推定)
  • 2026年度改定による増収:約289万円(2.41%)
  • 2027年度改定による増収:約452万円(3.77%)
  • 2年間の累積増収:約741万円

医療機関の種類による改定率の違い

さらに複雑なポイントとして、医療機関の種類によって改定率が異なります。物価対応分の内訳をご覧ください。

物価対応(1.29%)の内訳

対応項目 改定率
一般的な物価対応 0.76%
 └ 病院 +0.49%
 └ 医科診療所 +0.10%
 └ 歯科診療所 +0.02%
食費・光熱水費対応 0.09%
その他物価対応 0.44%

ここから明らかなのは、病院が相対的に大きな物価対応を受ける一方、診療所や歯科診療所の物価対応はかなり限定的という点です。

医療機関の種類による改定率の差が生じる理由

病院の場合

入院患者を多数抱えるため、医療材料費、医薬品費、食費、光熱水費など、多岐にわたる物価上昇の影響を受けやすい体質です。特に急性期病院では、高度な医療機器の維持費や高額な医療材料の費用が大きく、物価上昇への対応が不可欠です。

診療所の場合

相対的に物価変動の影響が小さいとみなされています。ただし、実際には医療材料費や薬品代の上昇は診療所でも深刻であり、この改定率では不十分だという声も聞かれます。


2040年を見据えた医療体制構築の背景

改定の基本方針には「2040年を見据えた医療体制の構築」という表現が何度も出てきます。なぜ今、2040年が注目されるのでしょうか。

それは、日本の人口動態が2040年に大きな転機を迎えるからです。

人口構造の急激な変化

👥 2040年に向けた人口動態の推移

  • 現在(2026年):65歳以上の高齢者数は約3,600万人
  • 2040年:75歳以上の人口がピークを迎え、約2,000万人に
  • 特に85歳以上の高齢者は現在から62%増加する見通し

つまり、今後14年間で、最も介護・医療サービスを多く必要とする85歳以上の人口が大幅に増加するということです。このタイミングで医療体制を整備しておかなければ、2040年には医療現場が崩壊しかねません。


後編予告

前編では、令和8年度改定の改定率がどのような構成になっており、なぜそのような構造なのかを解説してきました。

後編では、以下の内容をお届けする予定です。

  • 改定の4つの基本方針
  • 職種別・立場別に見た改定の重要ポイント
  • 6月施行に向けた施設側の準備スケジュール
  • よくある質問への回答

次回の後編では、この前編で学んだ「改定の数字」がどのような医療現場の改革につながるのかを、より実践的にお伝えします。


※この記事は2026年2月21日現在の情報に基づいています。診療報酬改定の詳細については、厚生労働省公式サイトをご参照ください。

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