8月23日に健康保険連合会が行った提言のうち、「花粉症治療薬の保険外し」と「生活習慣病治療薬のフォーミュラリの導入」については触れてみましたので、今回は「リフィル処方の導入の検討について」について書いてみます。
リフィル処方とは?
リフィル処方とは繰り返し利用可能な処方箋と表現されています。
もう少し細かく言うと、医師が病状が安定し、繰り返し同じ処方を受けることが見込まれる患者に対し、処方内容および繰り返せる回数、有効期限等を決定し処方するものです。
今回の提言のなかでは、調剤はかかりつけ薬剤師のみが行うこととされています。
症状が安定している人で、ずっと同じ薬を飲んでる人は毎回同じ薬剤師に調剤してもらうなら毎回診察は受けなくてもいいよ、ということになります。
かかりつけ薬剤師が患者の状態や服薬状況を確認することで、必要に応じて受診勧奨をすることで、患者の体調変化などにも対応することが可能と考えられています。
ちなみに、生活習慣病の薬を服用患者を対象として調査では、「長期にわたり継続して処方されている患者のうち、1年間に処方変更があった患者の割合は16%程度」という研究報告の結果もあります。この研究だけで見ると、長期継続処方の患者の84%はリフィル処方箋の対象患者と見込めます。これだけの人が対象となるのならば、制度としても大きな役割を持つものになりそうだと思います。
現行の制度との違いは?
現在の制度の中でもリフィル処方と似たようなもので「分割調剤」というものがあります。
(5)薬局における分割調剤について(平成30年度改定) ① 長期保存が困難な場合や後発医薬品を初めて使用する場合以外であっても、患者の服薬管理が困難である等の理由により、医師が処方時に指示した場合には、薬局で分割調剤を実施する。その際、処方医は、処方箋の備考欄に分割日数及び分割回数を記載する。20 Ⅲ 調剤報酬点数表における留意事項。2回目以降の調剤時は患者の服薬状況等を確認し、処方医に対して情報提供を行う。(分割の上限は3回まで) ② 分割調剤に係る留意点は以下のとおり ア 分割指示に係る処方箋の交付を受けた患者に対して、処方箋受付前に、継続的な薬学的管理及び指導のため、当該処方箋の1回目の調剤から調剤済みになるまでを通して、同一の保険薬局に処方箋を持参するべきである旨を説明する。 イ 患者に対し、次回の自局への処方箋持参の意向の有無及び予定時期を確認するとともに、予定時期に患者が来局しない場合は、必要に応じ、電話等で服薬状況を確認し来局を促す。 ウ 患者から次回は別の保険薬局に処方箋を持参する旨の申し出があった場合は、患者の了解を得た上で、次回の円滑な薬剤交付に資するよう、調剤後遅滞なく、患者が次回処方箋を持参しようとする保険薬局に対し、調剤の状況とともに必要な情報をあらかじめ提供する。 エ 別紙を含む処方箋の全てが提出されない場合は、当該処方箋は受け付けられない。
「平成30年度保険調剤の理解のために」より引用
現行の分割調剤とリフィルの違いは
①対象患者
分割調剤では、長期保存が困難、後発医薬品をはじめて使う、服薬管理が困難とされていますが、リフィルでは病状が安定し、繰り返し同じ処方を受けることが見込まれる患者ということで対象患者像が異なります。
②調剤する薬局・薬剤師
分割調剤では、基本的には処方箋を毎回同じ薬局に持参すべきとなっていますが、患者からの申し出により別の薬局へ変更することも可能である。リフィルでは、かかりつけ薬剤師による調剤となっているので、同一薬局でも別の薬剤師では不可となるようです。
一方で、処方医に対する服薬状況を確認して報告するとういう点は変わりません。
医療費に対する効果は?
リフィルを導入することで削減される医療費は何でしょうか?
病院・クリニックでの再診料(72点)と処方箋料(68点)がリフィル処方箋によって削減することができ、健保連では年間で362億円の削減効果があると見込んでいます。
まとめ
医師側のメリットは業務負担の軽減ですが、再診料・処方箋料を失うので、医師会はほぼ間違いなく反対を表明するはずです。病院の勤務医からは歓迎の声もあがるかもしれません。
薬剤師側は患者メリットもあるし、かかりつけ機能を発揮できるのでプラスに捉えることが多いかもしれませが、門前薬局では患者数が減ることが予想されるので危機感を持って捉える企業も多いかもしれません。
患者は同じ薬をもらうために、わざわざ受診をしなくていいので、病院の近くの薬局で薬をもらうことがむしろデメリットになってきます。薬局に行くだけでいいのなら、家の近くなり、職場の近くなりの自分の生活に便利なところでもらうほうがよいです。
リフィル導入によって薬局のあり方にもかなりの影響はあると考えれるので、今後も注意して動向を追っていきます。
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