市販類似薬は保険対象外になるかもしれない

2019年12月1日日曜日

OTC 医薬品 医療制度 医療費 市販類似薬

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本日の以下のようなネットニュースが発信されていました
政府は30日、全世代型社会保障改革の一環として、市販の医薬品と同じような効果があり代替が可能な薬(市販品類似薬)について、公的医療保険の対象から除外する方向で調整に入った。(産経新聞)

 公的医療保険制度

前提として、公的医療保険制度を説明します。
日本は国民皆保険制度を採用しており、基本的には全国民が健康保険に加入することとされています。そこに加入している国民が、病気や怪我などで医療を受ける場合には1割〜3割の自己負担金で、残りの割合については国民健康保険連合会や社会保険支払基金から医療機関に支払われます。早い話が給料から引かれている社会保険料等と税金から支払われていることになります。これが日本の公的医療保険制度です。

市販類似薬って何?

ニュース記事の中にもある「市販類似薬」とは何でしょうか。具体的な議論は今後行われるので確定的な情報ではありませんが、記事の中では

保険除外の対象として想定しているのは風邪薬や花粉症治療薬、湿布薬、皮膚保湿剤、漢方薬などの軽症薬
と記載されています。
以前の花粉症の薬が保険から外れるとコストがあがるのか検証してみた。で書いていますが、医療保険の中で使用されている薬と全く同じ成分の市販薬も多く販売されています。
医療用医薬品から一般用医薬品(OTC医薬品)のスイッチ(厳密には一般用での販売が追加になるだけなので、切り替えではないですが)するのでスイッチOTCという言い方をされている場合もあります。胃酸を抑えるガスター10や痛み止めのロキソニンSなども第一類医薬品としてドラッグストアなどでも購入できますし、病院で処方されることもある薬です。

なぜ公的医療保険の対象から除外するのか?

なぜ市販類似薬を公的医療保険の対象から除外することが検討されているのかというと、医療費が大きくなりすぎているからです。
これらを除外することで、医療費のなかの医薬品で使用される金額を減らすことができます。また、軽症な患者さんに対しては処方できる薬が市販でしかないとなると受診する必要もなくなるので、診察料や検査料なども減らすことができると考えられます。
ざっくりといえば、みんなのお金をつかってまで治療するほどの症状じゃない人は自分で薬を買って治してねという感じです。

どんな影響があるか?

医療費が抑えられることにより、給料から引かれる社会保険料額の今後の増え方が緩やかになるかもしれません。つまり手取りの割合がわずかに増えるということです。もちろん医療費の増大を抑えることは国家財政にとっても好影響を与えます。
一方で、重症な患者さんに制度の問題で市販薬しか使うことができないというジレンマが発生する可能性があります。処方箋の薬とは別に痛み止めが必要だからドラッグストアで買ってくださいというのは、現実的はないと思いますので、どのように対処するかは今後注視します。

国民が考えなければいけないこと

今回の対象除外があってもなくても、医療の受け方というのは国民ひとりひとりが考える必要があると思います。公的保険は相互扶助の考え方になるので、例えばヒルドイドソフトをハンドクリームや化粧品代わりとして保険を使って出してもらうことが適切かと考えればわかると思います。もし自分の毎月の給料から引かれている社会保険料が誰かの化粧品やサプリメント代金になっていると知ってどう感じますか。喜んでそのお金を払えるでしょうか。必要なお金を必要な人に行き渡るというのが制度のあるべき姿であると国民がきちんと認識することが必要です。

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