調剤基本料の変遷と現状 ~2026年改定で複雑化した6区分の要件を完全解説~

2026年3月3日火曜日

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調剤基本料の変遷と現状 ~2026年改定で複雑化した6区分の要件を完全解説~

公開日: 2026年3月2日
主テーマ: 調剤基本料の改定歴史、2026年の6区分制度の詳細、基本料と加算の組み合わせによる経営影響


はじめに:「単純な点数表」から「複雑な条件判定」への転換

調剤基本料は、調剤報酬の最も基礎的な項目であり、処方箋を受け付けるたびに算定される最重要な報酬項目です。ところが、ここ数回の改定を重ねるたびに、その条件は急速に複雑化しています。

2020年時点では、「立地」「規模」「医療機関との関係」という3つの軸でシンプルに区分されていました。ところが2022年度改定では集中率の計算方式が厳格化され、2024年度改定では特別調剤基本料が2区分に分割され、そして2026年度改定では「門前薬局等立地依存減算」という全く新しい概念が導入されました。

多くの薬局経営者からは「調剤基本料が複雑すぎて、自局がどの区分になるのか判断できない」という悲鳴が上がっており、これは改定実施からの3ヶ月(6月~8月)で実際に想定外の減収が判明するケースにもつながっています。

本記事では、調剤基本料がここまで複雑化した背景、現在の6区分制度の要件を整理し、さらに基本料と地域支援・医薬品供給対応体制加算の組み合わせによる実際の経営影響を、具体的なシミュレーションを通じて解説します。


第1章 調剤基本料の変遷史:なぜ複雑化したのか

2020年度(平成32年度改定):「シンプルな3区分」の時代

調剤基本料の変遷を理解するために、2020年度時点の状況からスタートします。当時の構成は非常にシンプルでした。

区分 点数 主な要件 対象薬局
基本料1 41点 集中率70%超以下 面分業・地域密着型
基本料2 24点 月受付4,000回超 または 集中率95%超 門前・規模大
基本料3 15点 グループ300店舗以上 大型チェーン

この時点では、「立地」「受付回数」「規模」という3つの単純な軸で判定が可能でした。敷地内薬局については「特別調剤基本料」(当時は7点)として別枠で扱われていました。

2022年度改定:「集中率ルール」の厳格化と複雑化の始まり

2022年度改定は、調剤基本料がシンプルから複雑へと転換する重要な転機となりました。

区分 2020年度 2022年度 変化
基本料1 41点 42点 +1点、集中率要件据置
基本料2 24点 26点 +2点、要件複雑化
基本料3イ 基本料3: 15点 21点 初めて「イ」が新設される
基本料3ロ 16点 新設区分
基本料3ハ 33点 新設区分
特別調剤基本料 7点 7点 据置

注目すべき点は、基本料2の要件が複数の条件の「組み合わせ」になったことです。それまでの「~か または ~」という単純な選択肢から、「~を超えかつ~」という複合条件へと変わったのです。

2022年度改定で導入された主な複雑化要因:

  • 集中率95%を超える薬局と、月4,000回を超える薬局での基本料2の適用が明確に分離された
  • 医療モール内の複数クリニックからの処方箋をどう計算するかが議論対象となった
  • 大型チェーン薬局を細分化するため「基本料3イ・ロ・ハ」の3区分が導入された

2024年度改定:「敷地内薬局への圧力」と「特別調剤基本料A・B」の誕生

2024年度改定は、それまでの「基本料区分の複雑化」に加えて、「敷地内薬局への明確な規制」という新たなメッセージを打ち出しました。

区分 2022年度 2024年度 変化
基本料1 42点 45点 +3点
基本料2 26点 29点 +3点
基本料3イ 21点 24点 +3点
基本料3ロ 16点 19点 +3点
基本料3ハ 33点 35点 +2点
特別調剤基本料A 7点 5点 -2点(敷地内への規制強化)
特別調剤基本料B 3点 新設(施設基準未届出薬局)

2024年度改定で最も注目すべき点は「特別調剤基本料が7点から5点に低下した」ことです。これは敷地内薬局に対する国の強いメッセージであり、同時に「特別調剤基本料B(3点)」という、施設基準の届出すら行わない薬局への最低ランクが新設されました。

さらに、この改定では地域支援体制加算が4区分に統合されるとともに、「特別調剤基本料Aの薬局では加算が本来の10%でしか算定できない」というルールが導入され、敷地内薬局の経営圧力は飛躍的に高まりました。

2026年度改定:「立地依存減算」の導入と「集中率85%」への厳格化

そして現在の2026年度改定です。ここでの最大の新しい概念が「門前薬局等立地依存減算(-15点)」の導入です。

区分 2024年度 2026年度 変化 背景
基本料1 45点 47点 +2点 面分業推進
基本料2 29点 30点 +1点 月1,800回で新たに適用
基本料3イ 24点 25点 +1点 店舗数基準廃止
基本料3ロ 19点 20点 +1点 グループ40万回新基準
基本料3ハ 35点 37点 +2点 大手面分業を優遇
立地依存減算 -15点 新設(都市部門前) 門前からの脱却
特別調剤基本料A 5点 5点 据置 敷地内の圧力継続
特別調剤基本料B 3点 3点 据置

この改定の特徴は、基本料本体はすべて引き上げられているにもかかわらず、「立地依存減算」という新しい減算項目によって、門前薬局の実質的な報酬が大幅に引き下げられるという点です。これは「見かけ上のプラス改定」の中に、実は「選別的な強い規制」が隠されているという、極めて複雑な構造となっています。


第2章 2026年度の6区分制度:全体像と各区分の詳細要件

調剤基本料の全体構図

2026年6月1日より施行される調剤基本料は、以下の6つの区分に整理されます(特別調剤基本料を含む)。

区分 点数 対象薬局のタイプ 判定の複雑性
調剤基本料1 47点 面分業・地域密着型 ★☆☆☆☆(シンプル)
調剤基本料2 30点 門前・規模中程度 ★★★★☆(複雑)
調剤基本料3イ 25点 中規模グループ ★★★☆☆(複雑)
調剤基本料3ロ 20点 超大規模チェーン敷地内 ★★★☆☆(複雑)
調剤基本料3ハ 37点 超大規模チェーン面分業 ★★★☆☆(複雑)
特別調剤基本料A 5点 敷地内薬局 ★★☆☆☆(比較的シンプル)
特別調剤基本料B 3点 施設基準未届出 ★☆☆☆☆(シンプル)

この表を見て分かる通り、「調剤基本料2」と「調剤基本料3(イ・ロ・ハ)」の判定が極めて複雑です。これらの区分に該当する薬局では、複数の条件を同時に確認し、どの条件に最初に抵触するかによって基本料が決まります。

### 【正確な判定フロー】調剤基本料2か基本料1かを判定する

実際に自局の基本料を判定する際には、以下の順序立てた判定フローが必須です。

判定ステップ 確認項目 基本料決定
Step1 特別調剤基本料A・Bの要件に該当するか? 該当→特別A or B
該当しない→Step2へ
Step2 グループ全体の月間受付回数を確認
(3.5万回or 4万回を超えるか)
超える→基本料3検討
超えない→Step3へ
Step3 特定医療機関への集中率を確認
(85%超か、95%超か)
85%以下→基本料1
85%超→Step4へ
Step4 月間受付回数を確認
(600回、1,800回、2,000回、4,000回)
基本料2の区分確定
Step5 立地依存減算の対象か確認 該当→-15点適用
該当しない→確定

このフローから分かる通り、最終的な基本料の決定には5つのステップが必要です。一つの条件を誤読すれば、全く異なる基本料が適用される可能性があります。

各区分の詳細要件を個別解説

①調剤基本料1(47点):面分業薬局のスタンダード

算定要件(以下のいずれにも該当しない薬局):

  • 特別調剤基本料A・Bの要件に該当していない
  • 基本料2、3、3イ、3ロ、3ハの要件に該当していない

簡潔な判定基準:

  • 特定の医療機関への集中率が85%以下
  • グループ全体の月間受付回数が35,000回以下(35,000回超の場合は集中率95%以下)
  • 医療機関との間に不動産賃貸借関係がない

実務上の注意点: 基本料1を算定していても、月間受付回数が1,800回を超える場合は毎月確認が必要です。1,800回を超えかつ集中率が85%超となった時点で基本料2への転落リスクが生じます。

②調剤基本料2(30点):最も複雑な区分

調剤基本料2に該当する全条件(いずれかに該当):

条件番号 月間受付回数 集中率 備考 2022年度改定からの変更
条件1 月4,000回超 70%超 大型門前薬局 据置
条件2 月2,000回超~4,000回以下 85%超 中型門前薬局 集中率基準を改定(従来は95%超)
条件3 月1,800回超~2,000回以下 85%超~95%以下 小規模門前 2026年度新設
条件4 月600回超 85%超 都市部新規開設薬局のみ 2026年度新設
条件5 グループ月35,000回超~40万回以下 95%超 グループ単位の判定 グループ要件として新設

実務上最も重要な変更点:

(1) 「月1,800回超+集中率85%超」が新たに基本料2の対象になった

これまで「月2,000回未満なら集中率が高くても基本料1」という薬局が、月1,800回~2,000回の範囲で集中率85%超の場合、基本料2に転落します。月1,900回前後で営業している中核的な門前薬局では、この基準に該当する可能性が高く、既に転落が始まっています。

(2) 都市部の新規開設薬局に厳しい基準が設定された

東京23区・政令指定都市に新規開設する薬局で、月600回超の処方箋を受け付け、かつ集中率が85%を超える場合、初めから基本料2が適用されます。これは新規出店による門前依存ビジネスモデルを事実上禁止するに等しい措置です。

③調剤基本料3イ(25点):中規模グループ薬局

算定要件:

  • 同一グループの処方箋総受付回数が月3万5千回超~40万回以下
  • かつ 集中率が95%超 または 医療機関との間に特別な不動産関係がある場合

重要な変更:2026年改定で「店舗数300以上」という要件が廃止された

従来は「グループで300店舗以上」という条件も判定基準に含まれていました。これが廃止され、「処方箋の総受付回数」のみが判定基準になったため、グループの再編や分社化では基本料の回避が困難になりました。

④調剤基本料3ロ(20点):超大規模グループの敷地内型

算定要件:

  • 同一グループの処方箋総受付回数が月40万回超
  • かつ 集中率が85%超

主に100店舗以上の超大規模チェーン薬局の中で、敷地内や門前的な立地にある店舗が該当します。

⑤調剤基本料3ハ(37点):超大規模グループの面分業型

算定要件:

  • 同一グループの処方箋総受付回数が月40万回超
  • かつ 集中率が85%以下

2026年改定で+2点の引き上げが行われた、最も優遇される区分です。 これは、大型チェーン薬局であっても面分業を実践している場合は、報酬面でしっかり評価するというメッセージが込められています。

⑥特別調剤基本料A(5点):敷地内薬局への規制

算定要件:

  • 医療機関の敷地内または建物内に所在
  • 医療機関との間に不動産賃貸借関係等の特別な関係がある
  • 特定の医療機関からの処方箋集中率が50%超

特別調剤基本料A算定時の極めて重要な制約:

特別調剤基本料A(5点)を算定している薬局では、地域支援・医薬品供給対応体制加算を本来の10%の点数でしか算定できません。

例えば、加算3に相当する実績がある場合でも:

  • 通常薬局:67点
  • 特別A薬局:67点 × 10% ≈ 7点

この制約により、敷地内薬局は基本料だけでなく加算面でも極めて低い水準に押さえられています。

へき地特例:基本料1を算定する条件

ただし、以下のすべてを満たす場合は、特別調剤基本料Aではなく基本料1(47点)を算定できます。

  • 地方公共団体が所有する土地に所在
  • 都道府県知事がへき地医療拠点として認める公的医療機関の敷地内
  • 半径4km以内に他の保険薬局が存在しない

⑦特別調剤基本料B(3点):施設基準未届出薬局

算定要件:

  • 調剤基本料に係る施設基準の届出を行っていない薬局

これはペナルティ的な最低ランクです。すべての薬局は最低限の施設基準を届け出る必要があります。


第3章 「立地依存減算」:2026年最大の新しい概念

門前薬局等立地依存減算(-15点)の概要

2026年改定で最も注目すべき新設項目が「門前薬局等立地依存減算」です。これは調剤基本料から一律**15点が減算される**という、極めてシンプルながら影響の大きい規制です。

減算の対象者:以下のいずれかに該当する薬局

パターン 対象地域 具体的な要件 対象薬局の想定数
パターン1 都市部
(東京23区・政令都市)
半径500m以内に他薬局あり+集中率85%超+さらに以下のいずれか:
・200床以上病院100m以内+2薬局以上
・周囲50m以内に2薬局以上
数百~千単位
パターン2 全国 医療機関と同一敷地内・建物内に所在+集中率85%超 数千単位

減算の実際の経営影響

立地依存減算が適用された場合、基本料がどこまで低下するかを示します:

区分 減算前 減算後 実質的な減少 1回あたり金額
基本料1 47点 32点 -15点 470円→320円(-150円)
基本料2 30点 15点 -15点 300円→150円(-150円)
基本料3ロ 20点 5点 -15点 200円→50円(-150円)
基本料3ハ 37点 22点 -15点 370円→220円(-150円)

特に注目すべき点は、「基本料3ロに立地依存減算が適用されると、わずか5点(50円)」という、特別調剤基本料Aと同水準にまで低下することです。

月間処方箋数別の年間影響額シミュレーション

月間受付枚数 基本料2+立地依存減算適用 月間減少額 年間減少額
1,000枚 15点 × 1,000 × 10円 150,000円 1,800,000円
2,000枚 15点 × 2,000 × 10円 300,000円 3,600,000円
3,000枚 15点 × 3,000 × 10円 450,000円 5,400,000円

月間3,000枚の薬局で立地依存減算が適用された場合、年間540万円の減収が発生します。多くの薬局において、これは営業利益の10~20%に相当する規模です。


第4章 基本料と地域支援・医薬品供給対応体制加算の組み合わせ影響

新しい加算体系の理解

2026年改定では、従来の「地域支援体制加算」と「後発医薬品調剤体制加算」が統合され、新たに「地域支援・医薬品供給対応体制加算」として5段階に再編されました。この加算は基本料の区分によって算定可能な水準が制限されるため、基本料と加算の「組み合わせ」が経営に大きな影響を与えます。

加算区分 点数 主な要件 基本料による制約
加算1 27点 後発医薬品使用割合85%以上+医薬品供給体制 制約なし
加算2 59点 加算1+地域医療貢献の一定実績 制約なし
加算3 67点 加算2+相当な地域医療貢献実績 基本料1推奨
加算4 37点 加算1+基本料以外の地域医療貢献 制約なし
加算5 59点 加算4+実績 基本料2以上で減算

【重要】特別調剤基本料A薬局の加算制約

特別調剤基本料A(5点)を算定する薬局では、地域支援・医薬品供給対応体制加算が本来の10%でしか算定できません。

具体例:加算3(67点)に相当する実績がある場合

  • 通常薬局(基本料1):基本料47点 + 加算67点 = 114点/回
  • 特別A薬局:基本料5点 + 加算(67×10%)≈7点 = 12点/回
  • 処方箋1回あたりの差:102点(1,020円)

月間2,500枚の薬局であれば:

  • 月間差額:102点 × 2,500 × 10円 = 25,500,000円
  • 年間差額:306,000,000円

ただし、処方箋数が極めて多いため、特別A薬局でも高額な基本料収入を確保できます。

基本料区分別の実際の加算取得状況(現状データ)

2024年度改定後の実際のデータから、基本料の区分と加算の関連を見ると以下のようになります。

基本料区分 加算1取得率 加算2以上取得率 平均加算点数 理由
基本料1 約60% 約35% 約35点 面分業で実績要件達成しやすい
基本料2 約40% 約15% 約20点 門前型で実績要件達成困難
基本料3 約50% 約10% 約15点 大型チェーンでも実績達成困難
特別A 約25% ほぼ0% 約3点 加算が10%になるため取得メリット薄い

このデータから分かる重要な事実:

基本料が低いほど、加算を取得する動機付けが弱まるという現象が生じています。特別調剤基本料Aの薬局では加算取得率が25%に留まっており、「加算を取得するインセンティブが失われている」状態です。


第5章 規模別・立地別の具体的シミュレーション

シナリオ1:小規模個人薬局(月1,500枚、集中率60%、基本料1)

項目 2024年度(改定前) 2026年度(改定後) 増減
基本料1 45点 × 1,500 × 12月 47点 × 1,500 × 12月 +36万円
地域支援加算(加算2) 40点 × 1,500 × 12月 59点 × 1,500 × 12月 +342万円
ベースアップ評価料 0円 4点 × 1,500 × 12月 +72万円
調剤物価対応料 0円 1点 × 1,500 × 4回 +6万円
小計 +456万円
従業員給与改善 (ベースアップ評価料から配分) -72万円
実質増収 +384万円

評価:小規模個人薬局は「改定の最大の勝者」

シナリオ2:中規模門前薬局(月2,000枚、集中率92%、改定前基本料1→改定後基本料2)

項目 2024年度(改定前) 2026年度(改定後) 増減
基本料1→2転落 45点 × 2,000 × 12月 30点 × 2,000 × 12月 -360万円
地域支援加算(加算1のみ) 32点 × 2,000 × 12月 27点 × 2,000 × 12月 -120万円
ベースアップ評価料 0円 4点 × 2,000 × 12月 +96万円
調剤物価対応料 0円 1点 × 2,000 × 4回 +8万円
小計 -376万円

評価:基本料2転落により、新設加算では到底カバーできない大幅減収が発生

シナリオ3:都市部門前薬局(月2,500枚、集中率88%、基本料1+立地依存減算適用)

項目 2024年度(改定前) 2026年度(改定後) 増減
基本料1 45点 × 2,500 × 12月 47点 × 2,500 × 12月 +60万円
立地依存減算 0円 -15点 × 2,500 × 12月 -450万円
ベースアップ評価料 0円 4点 × 2,500 × 12月 +120万円
小計 -270万円

評価:立地依存減算により、見かけのプラス改定がマイナスに逆転

シナリオ4:大手チェーン(グループ月50万回、300店舗、店舗平均1,700枚)

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店舗分類 店舗数 月平均受付 基本料変化 年間影響
面分業店舗(基本料3ハ) 150店 1,500枚 35→37点(+2) +54百万円
標準門前店(基本料1) 100店 1,700枚 45→47点(+2) +48.6百万円
基本料2転落店

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