在宅患者訪問薬剤管理指導料(2026年改定版)

2026年3月12日木曜日

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在宅患者訪問薬剤管理指導料(2026年改定版)

改定の背景・基本方針

2026年度調剤報酬改定では、在宅患者訪問薬剤管理指導料について、算定間隔の要件が大幅に緩和されます。従来の「中6日以上」から「週1回」に見直され、訪問頻度をより柔軟に設定できるようになります。同時に、医師と薬剤師による同時訪問の評価が新たに設定され、多職種連携による在宅医療の充実が促進されることになります。

この改定の狙いは、在宅患者の薬学的管理をより実効的に行うため、訪問頻度の制限を緩和し、かつ医師との連携を強化することです。特に多剤併用患者やポリファーマシー対策が必要な患者に対して、より密度の濃い薬学的介入を実現することが目的です。

主要な改定内容

1. 訪問間隔要件の大幅緩和

項目 現行(2024年) 2026年改定後
訪問間隔要件 「中6日以上」空ける必要あり 「週1回」算定可能に緩和
算定限度 月4回まで(末期がん・麻薬注射は月8回) 月4回まで(末期がん・麻薬注射は月8回)※変更なし

実務インパクト

  • 従来は「6日間の間隔」を厳密に守る必要がありましたが、今後は「週1回のペース」であれば月4回までの枠内で柔軟に対応可能
  • 例:月曜日、火曜日、水曜日、木曜日の4週連続訪問など、より患者の状態に応じたスケジュール対応が可能に
  • ただし、月間の合計回数は依然として4回(末期がん・麻薬注射の場合は8回)の上限あり

2. 夜間・休日対応の要件追加

新設要件

在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定するために、今後は以下の要件が追加されます:

  • 夜間・休日の連絡体制の整備が必須
  • 患者や医療機関からの緊急時の相談に対応できる体制の構築
  • 電話やメール、またはICTを用いた連絡手段の確保

施設基準への影響

これまで在宅患者訪問薬剤管理指導料は、基本的に調剤基本料の施設基準で対応していましたが、今後は「営業時間外対応体制」を整備している薬局が有利になる可能性があります。当番薬局制度や医療機関との協定など、実質的な対応体制を証跡で示すことが重要です。

3. 訪問薬剤管理医師同時指導料(新設・150点)

算定条件

  • 対象患者:在宅患者訪問薬剤管理指導料「1」(単一建物診療患者1人)を算定している患者
  • または在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料を算定している患者(単一建物1人に限る)
  • または居宅療養管理指導費(薬局の薬剤師が実施、単一建物居住者1人)を算定している患者
  • 算定頻度:6ヶ月に1回に限り
  • 実施内容:保険医(医師)と薬剤師が同時に訪問し、薬学的管理・指導を実施
  • 要件:患者・家族の同意を得て実施

実務のポイント

  • 医師との同時訪問により、処方提案や減薬提案がその場で実施可能に
  • 令和6年の調査では、同時訪問時に減薬が実施される率が高い結果が報告されている
  • 150点は比較的控えめな評価だが、医師との連携強化が主目的
  • 医師の訪問診療スケジュールとの調整が必須
  • 6ヶ月に1回の制限があるため、年2回が最大

除外要件

  • 在宅患者緊急時等共同指導料の対象患者
  • 在宅移行初期管理料で同日に必要な指導を実施した患者

4. 複数名薬剤管理指導訪問料(新設・300点)

算定条件

  • 対象患者:在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定している患者のうち、身体的・精神的状況等により複数名での訪問が必要な患者
  • 実施内容:薬剤師を含む複数名(2名以上)で訪問し、薬学的管理・指導を実施
  • 要件:患者・家族の同意を得て実施

対象患者の具体例

  • 精神疾患を有し、予測困難な行動リスクがある患者
  • 認知機能低下により、1名では安全な指導が難しい患者
  • 身体的に動作が困難で、複数人でのサポートが必要な患者
  • 複雑な多剤併用状況で、時間をかけた説明・同意取得が必要な患者

注意点

  • 300点は高い評価だが、複数名訪問には人件費が増加
  • 訪問時間が延長される可能性があるため、採算性の確認が必須
  • 「複数名が必要」という医学的判断が請求根拠として重要
  • 電子薬歴に訪問の必要理由を明記し、監査対応に備える

現行の点数体系(変更なし)

区分 対象患者 点数
在宅患者訪問薬剤管理指導料 1 単一建物診療患者1人 650点
在宅患者訪問薬剤管理指導料 2 単一建物診療患者2〜9人 320点
在宅患者訪問薬剤管理指導料 3 単一建物診療患者10人以上 290点
訪問薬剤管理医師同時指導料 医師との同時訪問(6ヶ月に1回) 150点(新設)
複数名薬剤管理指導訪問料 複数名訪問が必要な患者 300点(新設)

関連する加算・減算との関係

麻薬管理指導加算(250点)

医療用麻薬の持続注射療法が行われている患者への訪問時に加算可能。在宅患者訪問薬剤管理指導料と合わせて算定できます。

乳幼児加算・小児特定加算

15歳未満の小児患者への訪問時に加算。小児患者の在宅医療体制の充実が求められています。

無菌製剤処理加算

2026年改定で小児対象が拡大される予定。在宅での無菌製剤処理(混合調製など)を実施した場合に算定可能。

在宅薬学総合体制加算との関連

在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定するには、薬局として「在宅薬学総合体制加算」を取得していることが実務上の前提となります。2026年改定では、加算1は30点(従来15点)、加算2は100点・50点(従来50点)に引き上げられ、同時に要件が厳格化されています。

要件 2024年(現行) 2026年(改定後)
在宅訪問実績 年24回以上 年48回以上(倍増)
常勤薬剤師配置 配置要件なし 常勤換算3名以上、開局時間中は原則2名以上常駐
無菌設備基準 必須 廃止

経営シミュレーション

シナリオ:月当たり在宅患者訪問3件、うち医師同時訪問月1回、複数名訪問月1回を想定

訪問パターン 月間件数 点数 月収(@10円)
通常訪問(650点×2件) 2件 1,300点 13,000円
医師同時訪問加算(150点) 1件 150点 1,500円
複数名訪問(300点) 1件 300点 3,000円
合計 4件 1,750点 17,500円/月

費用勘案

  • 訪問1件当たりの移動費:ガソリン代300円~600円
  • 薬剤師人件費(1時間の訪問・調整):1,200円~1,500円
  • 複数名訪問時の追加人件費:500円~800円
  • 医師同時訪問による効率化(スケジュール調整):移動時間削減で30分程度短縮可能

採算性判定:通常訪問(650点 = 6,500円)に対し、移動費・人件費を2,500円と想定した場合、月粗利益は4,000円程度。複数訪問による採算改善が重要課題です。

実務上の重要な注意点

電子薬歴への記録義務

医師同時訪問や複数名訪問を算定する場合、電子薬歴に以下を明記することが必須です:

  • 訪問日時、訪問内容(薬学的管理内容)
  • 同時訪問の場合:医師の名前、医療機関名、同時訪問の実施内容
  • 複数名訪問の場合:訪問者名、複数名訪問が必要だった医学的理由
  • 医師への報告内容(処方提案、残薬調整、減薬提案など)

保険請求上の注意

  • 医師同時訪問加算(150点)は6ヶ月に1回の制限あり。年2回までが限度
  • 複数名訪問の必要性が不十分だと、監査で減額される可能性あり
  • 月4回の訪問上限は依然として適用される(加算追加でも月回数は変わらない)
  • 訪問薬剤管理医師同時指導料は、在宅患者訪問薬剤管理指導料1の患者に限定

導入時の実務チェックリスト

Phase 1(4月):現状確認・医師連携体制の構築

  • ☐ 現在の在宅患者訪問薬剤管理指導料算定患者数をリスト化
  • ☐ 主治医(在宅医)の一覧を作成し、医師同時訪問の可能性を検討
  • ☐ 訪問患者の中から「複数名訪問が必要」な患者を抽出
  • ☐ 電子薬歴システムが訪問内容の詳細記録に対応しているか確認
  • ☐ 夜間・休日の連絡体制(電話受け付け、オンコール体制)を整備

Phase 2(5月):医師との協議・スケジュール調整

  • ☐ 訪問診療を行う医師と連携会議を開催
  • ☐ 医師同時訪問の実施可能患者を特定し、医師の同意を取得
  • ☐ 複数名訪問が必要な患者について、必要理由の医学的判断を文書化
  • ☐ 訪問スケジュール(医師との同時訪問日)を決定
  • ☐ 薬剤師スタッフに訪問間隔の緩和内容と新加算の説明を実施

Phase 3(6月施行以降):運用・請求実務

  • ☐ 訪問間隔「週1回」での算定を開始
  • ☐ 毎月、医師同時訪問・複数名訪問の実績をカウント
  • ☐ 電子薬歴への記録を確認し、請求漏れがないか確認
  • ☐ 医師との連携状況(処方提案の実施率など)をモニタリング
  • ☐ 在宅薬学総合体制加算の要件維持(年48回以上の実績確認)

税理士・経営アドバイス

重要ポイント

1. 訪問間隔緩和の実務インパクト:「中6日以上」から「週1回」への見直しは一見すると利便性向上に見えますが、実質的には月4回の上限に変わりはありません。重要なのは、より患者の状態に応じた柔軟な訪問計画が可能になることです。例えば、薬学的介入が必要な時期に集中的に訪問し、その後は間隔を開けるなど、より効率的な運用が可能に。

2. 医師同時訪問加算の戦略的活用:150点という点数は比較的控えめですが、医師が同席することで処方提案がその場で承認される可能性が高くなります。多剤併用患者やポリファーマシーが疑われる患者を優先的に同時訪問の対象にすることで、医学的な成果(減薬率向上、有害事象防止)を実現できます。

3. 複数名訪問の採算判定:300点は高い評価ですが、複数の薬剤師・事務スタッフを配置する人件費が課題です。認知症や精神疾患を有する患者など、本当に複数名が必要な患者を厳選し、請求根拠を明確にすることが監査対応上も重要です。

4. 在宅薬学総合体制加算との関係が鍵:2026年改定では、加算1の実績要件が年24回から48回に倍増し、常勤薬剤師3名以上の配置が必須になります。在宅患者訪問薬剤管理指導料を増やすことで、加算要件の達成も同時に進む設計です。逆に、加算を取得しない薬局は、在宅訪問のインセンティブが限定的になります。

5. 夜間・休日対応体制の構築コスト:新たに追加された夜間・休日対応要件は、実質的に管理薬剤師や薬剤師スタッフの待機時間が増加することを意味します。当番制の導入やオンコール体制の構築に伴う人件費増加も念頭に置いて、増収効果との収支を検討すること。

参考資料・URL


執筆日: 2026年3月12日
改定施行日: 2026年6月1日
対象読者: 薬局経営者、薬剤師、調剤事務スタッフ

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