服用薬剤調整支援料2の全解説~1000点評価と老年薬学会研修の必須化~

2026年3月5日木曜日

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対象: 薬局管理者・薬剤師・調剤事務
主テーマ: 2026年度調剤報酬改定で1000点に大幅増点された服用薬剤調整支援料2の歴史的変遷、2027年6月施行に向けた算定要件、老年薬学会研修の必須化、および薬局の実務準備を完全解説。


1. 服用薬剤調整支援料の歴史的変遷

2018年度改定:ポリファーマシー対策の第一歩(125点新設)

服用薬剤調整支援料は、2018年度診療報酬改定で初めて登場しました。点数は125点。この時点では、ポリファーマシー(多剤併用)対策や高齢者の不適切な多剤処方の解消を目指す施策としての位置づけでした。

当時の要件

  • 複数の医療機関から処方されている6種類以上の内服薬が対象
  • 薬剤師が減薬の提案を行い、実際に2種類以上の薬剤が減少した場合に算定
  • 減薬が4週間以上継続していることが条件

2020年度改定:「成果」から「提案行為」への評価軸の転換(100点新設)

2020年改定で、服用薬剤調整支援料2が100点で新設されました。これは極めて重要な転換点です。

新設の意義

  • 従来の「減薬の成果」に限定せず、「提案行為そのもの」を評価する方向性の明確化
  • 医師が提案を受け入れずに減薬が実現しなかった場合でも、薬剤師の提案行為自体を報酬化
  • 対人業務の価値をより広く認める施策へのシフト

当時の料1と料2の違い

項目 支援料1(125点) 支援料2(100点)
対象 6種類以上が2種類以上減少 6種類以上の薬剤処方者(減薬不問)
成果条件 減薬が4週間以上継続 提案だけで評価(成果不問)
認識 結果ベース プロセスベース

2022年度改定:調剤管理料体系の抜本改革(点数変更なし)

2022年改定では、服用薬剤調整支援料2の点数自体は変わらなかったものの(100点据え置き)、周辺の調剤管理料体系が大きく改革されました。

当時の改革の柱

  • 調剤管理料が複数区分化(28日超と28日以下に分化)
  • かかりつけ薬剤師機能の強化と報酬拡充
  • 対人業務への傾斜評価が本格化

2024年度改定:実績データの蓄積と運用の定着(点数変更なし)

2024年改定でも服用薬剤調整支援料2の点数は100点で据え置かれました。ただし、以下の点で重要な局面を迎えていました。

2024年時点の課題

  • 算定実績が予想以上に低い(支援料1の半分以下)
  • 算定対象となる患者層が限定的
  • 薬剤師の「提案」と「文書化」の質にばらつき
  • 医師との連携・情報共有のプロセスが不十分な施設が多い

厚労省はこうした現状を踏まえ、「単なる減薬提案ではなく、患者の全体的な薬物療法を個別最適化する『薬剤レビュー』こそが評価されるべき」との認識を深めていきました。

2026年度改定:歴史的大転換 ~1000点への大幅増点~

2026年改定で、服用薬剤調整支援料2は1000点に大幅増点されました。これは調剤報酬史上における最高水準の評価です。

改定年度 支援料1 支援料2 特徴
2018年 125点(新設) ポリファーマシー対策の開始
2020年 125点(据え置き) 100点(新設) 提案行為の評価開始
2022年 125点(据え置き) 100点(据え置き) 調剤管理料体系改革
2024年 125点(据え置き) 100点(据え置き) 実績データ蓄積
2026年 125点(据え置き) 1000点(大幅増点) 薬剤レビュー=高度対人業務と位置づけ

増点の理由

  • かかりつけ薬剤師指導料・包括管理料の廃止に伴う「新しい対人評価体系」への移行
  • 単なる減薬ではなく、患者・家族の希望や背景を踏まえた「薬物療法の個別最適化」という高度な職能を評価
  • 地域で選ばれる薬局像(継続的・一元的把握→適正化提案→医師への情報提供)の実現を促進
  • 「多くの薬局が目指せるよう敢えて四桁という高い点数に設定」(厚労省)

2. 2026年度改定:服用薬剤調整支援料2の1000点評価

1000点の位置づけ:調剤報酬史上最高クラス

1000点という評価は、以下の加算と並ぶ最高水準です。

  • 在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料の深夜訪問加算:1000点
  • 服用薬剤調整支援料2:1000点(新規)

月間30処方(標準的な薬局)で算定した場合、年間3,600万円相当の追加収入が見込まれることから、経営への大きな影響が予測されます。

算定要件の概要(2027年6月1日施行)

施行開始時期2027年6月1日(他の改定項目より遅れて施行)

→ 準備期間として2026年6月~2027年5月の約1年間がある

算定の骨格:頻度・対象・プロセス

要素 内容
頻度 同一患者につき6ヶ月に1回まで(月1回ではなく年2回が上限)
薬剤師側の上限 かかりつけ薬剤師1人につき月4回まで(月最大4人分に相当)
対象患者 6種類以上の内服薬が複数の医療機関から処方されている患者
提案プロセス • 服用薬を継続的・一元的に把握
• 臨床的評価を実施
• 主治医に文書で提案

「薬剤レビュー」とは何か:評価内容の明確化

2026年改定で、服用薬剤調整支援料2の根拠として明確に位置づけられたのが「薬剤レビュー」です。

薬剤レビューの定義

薬剤師が患者から包括的に情報を収集し、服用薬剤に関する問題を分析・特定したうえで、患者・家族の希望や背景も踏まえた薬物治療計画を文書化し、主治医へ処方提案を行うプロセス

薬剤レビューに含まれる評価項目

  • 重複投薬・相互作用の確認:複数医療機関からの重複処方、薬剤相互作用
  • 用量・用法の妥当性評価:高齢者用量の必要性、腎機能低下時の用量調整
  • 有害事象(副作用)の確認:現在生じている症状が薬の副作用か否かの判定
  • 患者の背景・希望の把握:生活様式、食生活、経済状況、服用意思
  • 継続的・一元的把握:過去の処方推移から現在の薬物療法を総合評価

上田薬剤師会などが実践してきた「薬剤レビュー業務」が、今回の1000点評価の基礎となったという点は重要です。単なる減薬提案ではなく、患者の全体的な薬物療法を個別最適化する「マネジメント」として評価されています。

注目の変更点:「かかりつけ薬剤師」限定と研修必須化

算定対象薬剤師の制限

  • 服用薬剤調整支援料2は、「かかりつけ薬剤師」として機能している薬剤師のみが算定可能
  • 全薬剤師が算定できるわけではなく、相応の経験と能力が求められる

研修要件の新規設定(本日3月4日報道)

  • 日本老年薬学会による「老年薬学 服薬総合評価研修会」の受講が必須化
  • 受講資格:JPALS CL(Core Learning)レベル6相当の薬剤師
  • 開催予定:2026年8月(東京)
  • 募集開始:2026年6月予定
  • 定員:150名/年(年間600人程度受講可能と推定)
  • 受講方式:先着順

JPALS CLとは

日本薬剤師会が開発した「薬剤師生涯学習制度」で、キャリアの段階に応じたレベル設定(1~7)がされている。CL6は「専門領域での実務経験が充実し、高度な判断能力を備えている薬剤師」を想定したレベル。


3. 老年薬学会研修の必須化:詳細情報

研修内容と要件

研修名:「老年薬学 服薬総合評価研修会」

対象となる薬剤師

  • 相当程度の保険薬局勤務年数(目安として5年以上)を有する薬剤師
  • JPALS CLレベル6相当の能力を有することが求められる
  • 単に「キャリアが長い」だけでは不足;実践的な薬物療法評価能力が必須

研修実施体制

  • 日本老年薬学会が主催
  • 厚生労働省の承認・指定のもとで実施
  • 全国一律の基準で認定される(地域による差異がない)

研修受講のステップ

  1. 2026年6月:募集開始(予定)
  2. 2026年8月:研修会開催(東京予定)
  3. 研修修了後:修了証を取得
  4. 2027年6月:算定開始(施行日)

実務的な課題と懸念点

受講枠の狭さ

  • 年間定員が150名/回で、全国に約50,000薬局、約200,000薬剤師がいるなか、極めて限定的
  • 複数回開催されるか、複数地域での同時開催があるかは未発表
  • 「先着順」という記載から、競争率が高くなる可能性がある

実務経験と研修の両立

  • 5年以上の経験+研修受講という二重要件により、参入障壁が高い
  • 若手薬剤師や転職者は取得が困難
  • 経営者・管理薬剤師による研修派遣の計画が必要

研修内容の詳細発表待ち

  • カリキュラム、時間数、講師陣、費用(有料か無料か)は未発表
  • 年内に詳細が公表される予定だが、実施まで時間が限定的

4. 2027年6月施行に向けた薬局の準備

Phase 1:基礎知識の整備(2026年3月~5月)

必要な知識習得

  • 高齢者薬物療法:加齢に伴う薬物動態変化、高齢者用量ガイドライン、ビアーズ基準
  • ポリファーマシー対策:多剤併用の弊害、減薬プロセス、文献根拠
  • 薬剤相互作用の評価:DDI(Drug-Drug Interaction)の重要事例、患者への影響
  • 腎機能低下時の用量調整:eGFRに基づく用量設定、各主要薬剤の基準
  • オンライン資格確認の活用:患者の病歴・特定健診情報の閲覧と活用法

推奨教材

  • 日本老年薬学会の公開資料
  • 厚労省「高齢者医療における薬物療法ガイドライン」
  • 「ビアーズ基準」の和訳版(高齢者に不適切な薬剤リスト)
  • 学会主催の既存研修会(老年薬学会、日本薬剤師会など)

Phase 2:システム・情報基盤の整備(2026年4月~7月)

レセコン・薬歴システムの準備

  • 服用薬剤調整支援料2の算定フロー設定(頻度管理、薬剤師別月上限管理)
  • 患者の薬剤情報を「継続的・一元的に把握」するための情報管理機能
  • 6ヶ月ごとの算定タイミング管理と重複請求防止

オンライン資格確認(マイナンバーカード)対応

  • 患者の同意のもとで、診療情報・特定健診結果・お薬情報を取得する体制構築
  • 特に「腎機能(eGFR)」「血糖値」などの検査値が薬剤レビューの重要情報
  • システム導入費用やセキュリティ対策の事前検討

文書作成テンプレートの準備

  • 主治医への提案文書(トレーシングレポートの応用)
  • 薬剤レビュー実施記録の保存形式
  • 患者への説明記録(同意書など)

Phase 3:研修受講と実践準備(2026年6月~2027年5月)

対象薬剤師の研修派遣

  • 「相当程度の経験と能力を有する」薬剤師を事前に選定
  • 2026年8月の老年薬学会研修会への参加申込(6月開始予定)
  • 研修修了後、他スタッフへのフィードバック・教育

症例検討・模擬実践

  • 架空事例での薬剤レビュー実施(ポリファーマシー著明な患者を想定)
  • 医師への提案文書作成の練習
  • 患者・医師への説明トーク開発

医療機関との連携構築

  • 主治医へ「薬剤レビュー」の趣旨・内容を事前説明
  • 情報提供文書の形式・タイミングについて協議
  • ポリファーマシー患者の抽出・共有方法の確認

Phase 4:運用開始(2027年6月~)

算定の実装

  • 研修修了薬剤師による算定開始
  • 月4回の上限管理(同一薬剤師で月4患者分まで)
  • 患者ごと6ヶ月に1回の頻度遵守

レセプト請求

  • 摘要欄への記載(「薬剤レビュー実施」等の記載方法は通知待ち)
  • 主治医への提案文書の提出・保管(監査対応)

データ管理・改善

  • 月次の算定実績(件数、金額)集計
  • 医師からのフィードバック収集
  • 患者の服薬状況改善の追跡調査

5. 服用薬剤調整支援料1との違いと使い分け

項目 支援料1(125点) 支援料2(1000点)
対象患者 6種類以上の内服薬が「2種類以上減少し、4週間以上継続」 6種類以上の内服薬を継続的・一元的に把握し、評価・提案を実施
評価の焦点 「減薬の成果」 「薬物療法の全体的最適化」(減薬に限らず)
頻度制限 月1回まで 6ヶ月に1回まで
薬剤師要件 特に要件なし 老年薬学会研修修了が必須
主治医との連携 必須だが、様式は比較的自由 「文書による提案」が明確に要件化
対人業務の質 「作業」レベル:重複チェック、減薬提案 「マネジメント」レベル:患者背景を踏まえた個別最適化

使い分けのイメージ

  • 支援料1:「実際に減薬に成功した」ケースで月1回まで算定。スムーズな減薬・成果があった患者向け。
  • 支援料2:「薬物療法全体を一元的に評価し、臨床的根拠を持って提案した」ケースで6ヶ月に1回。提案内容が医師に受け入れられず実現しなくても、「提案プロセス」が評価される。

6. かかりつけ薬剤師指導料廃止との関係

2026年改定では、かかりつけ薬剤師指導料(76点)と包括管理料(291点)が廃止されました。この廃止に伴う「新しい対人評価体系」への移行が、服用薬剤調整支援料2の1000点評価の背景にあります。

改定の構造

  • 廃止:かかりつけ薬剤師指導料・包括管理料(形式的な「患者同意」「外来服薬支援」回数で評価)
  • 新設・強化:個別の対人業務(服用薬剤調整支援料2 1000点、フォローアップ指導料など)を評価

薬局経営への影響

  • 形式的な「かかりつけ登録」では報酬が得られない
  • 実質的な「薬物療法マネジメント」の実施を強く求められる
  • 1000点の「潜在能力」は高いが、取得のハードルも高い
  • 中小薬局でも「薬剤レビュー実践」を通じて1000点獲得の道が開かれている

7. 薬局経営への実務的なインパクト

ポジティブなシナリオ

研修受講薬剤師の配置例(月30処方の薬局)

  • 薬剤師A:研修修了、月4患者で服用薬剤調整支援料2算定 = 4患者 × 1000点 = 4,000点/月
  • 年間想定額:4,000点 × 12月 = 48,000点 ≒ 480万円
  • ただし「6ヶ月に1回」という頻度制限を考慮すると、実際の算定は半減(240万円程度/年)

質的な変化

  • 薬局が「医師の相談相手」としての地位向上
  • 患者との信頼関係深化(「単なる調剤者」から「健康管理パートナー」へ)
  • スタッフのモチベーション向上(高度な職能を発揮する機会)

ネガティブなシナリオ・課題

研修受講の困難さ

  • 年間定員150名で、全国50,000薬局をカバーすることは数学的に困難
  • 都市部(地理的に東京参加がしやすい)と地方で「研修受講機会の不平等」が発生する可能性
  • 複数回開催や地域別開催の拡充が急務だが、日本老年薬学会の体制に左右される

経営格差の拡大

  • 研修受講可能な「大手チェーン・規模の大きい薬局」と「研修アクセスが困難な小規模薬局」の差
  • 研修修了薬剤師がいない薬局は、1000点算定ができず収入機会を失う

医師との連携負担

  • 毎回「文書による提案」が必須なため、作成の手間・医師への対応時間が増加
  • 医師が「ルーチンの提案」として軽視する恐れもある

8. 2027年6月までのスケジュール表

時期 実施内容 担当
2026年3月 • 老年薬学会研修の詳細情報公開(予定)
• 薬局内で対象薬剤師の選定開始
管理薬剤師・経営層
2026年4月~5月 • 基礎知識習得プログラムの実施
• システム・情報基盤の確認・準備
研修予定者と関係スタッフ
2026年6月 • 老年薬学会研修の募集開始
• 参加申込手続き
対象薬剤師
2026年7月~8月 • 老年薬学会研修会開催(東京予定)
• 研修修了
対象薬剤師
2026年9月~2027年5月 • 薬剤レビュー実践(模擬演習)
• 医療機関との連携構築
• レセコン最終設定・テスト
全スタッフ
2027年6月1日 • 服用薬剤調整支援料2の算定開始(施行日) 研修修了薬剤師

9. まとめと経営的視点

服用薬剤調整支援料2の1000点評価と老年薬学会研修の必須化は、「調剤中心から高度な対人業務中心へ」という薬局業界の歴史的な転換点を象徴しています。

3つのポイント

  1. 「高評価=誰でも取れる」ではない:1000点という評価の重さは、実務経験と研修修了という二重の要件により、参入が限定されることで維持される
  2. 「研修受講機会の限定性」が課題:年間定員150名という枠は全国規模では不足。拡充を待つか、複数回受講の枠拡大を求める必要がある
  3. 「スモールスタートが現実的」:初年度は、ポリファーマシー著明で医師連携が良好な少数患者から始め、薬剤レビュー→提案→フォローの型を作ることが大事

経営的な準備の優先順位

  • 第1優先:対象薬剤師の選定と研修受講の確保(2026年6月の申込に向けて即実行)
  • 第2優先:情報基盤(オンライン資格確認)の整備と検査値取得体制の構築
  • 第3優先:医療機関(特に主治医)との関係構築と連携フロー開発
  • 第4優先:レセコン・薬歴システムの最終設定テスト

最後のメッセージ

2018年に125点で誕生した「服用薬剤調整支援料」は、2026年に1000点へと進化しました。この背景には、8年間の実践積み重ねと、薬剤師職能の深化に対する国の明確な評価があります。1000点という高評価は、単なる「点数の高さ」ではなく、「地域医療における薬剤師の責任と使命の重さ」を象徴しています。2027年6月の施行に向けて、今から着実な準備を進めることが、令和の時代における薬局の生き残りを左右する重要な分岐点となるでしょう。

関連資料:厚生労働省『令和8年度診療報酬改定答申』、日本老年薬学会『老年薬学 服薬総合評価研修会 開催要項』、日本薬剤師会『かかりつけ薬剤師機能と薬剤レビューガイドライン』。


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