かかりつけ薬剤師機能体制加算(2026年改定版)

2026年3月11日水曜日

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かかりつけ薬剤師機能体制加算(2026年改定版)

改定の背景・基本方針

2026年度調剤報酬改定では、従来の「かかりつけ薬剤師指導料」(76点)と「かかりつけ薬剤師包括管理料」が廃止され、その機能が「服薬管理指導料」に統合されます。同時に、新たに「かかりつけ薬剤師フォローアップ加算」(50点)と「かかりつけ薬剤師訪問加算」(230点)が設定されます。

この改定の狙いは、単に「かかりつけ薬剤師」の名目で点数を獲得するのではなく、実際の対人実績(残薬調整、処方提案、疑義照会、継続的なフォローアップ)に基づいて評価する体制への転換です。つまり、実績をいかに証跡管理し、医師と連携できるかが重要になります。

廃止される項目と統合先

項目 従来の点数 統合先(2026年) 新点数
かかりつけ薬剤師指導料 76点 服薬管理指導料1-イ(継続処方3ヶ月以内) 45点
かかりつけ薬剤師包括管理料 廃止 服薬管理指導料1-ロ・服薬管理指導料2 59点

重要: 従来は「かかりつけ薬剤師」の報告義務があれば76点が自動加算でしたが、2026年以降は、患者が服薬管理指導料1または2を受けることが前提となります。つまり、指導料そのものの算定要件を満たさないと、かかりつけ薬剤師関連の加算も取得できません

新設される加算(2大特徴)

1. かかりつけ薬剤師フォローアップ加算(50点)

算定条件

  • 対象患者:服薬管理指導料1-イ、1-ロ、または2-イを算定している患者
  • 算定頻度:3ヶ月に1回まで
  • 実施内容:電話またはICT(メッセージ)を用いて、以下を確認
    • 現在の服薬状況、残薬の有無
    • 副作用や相互作用の有無
    • 生活状況の変化に伴う服薬指導の必要性
  • 記録・証跡:電子薬歴に「実施日時、確認内容、残薬状況」を記載し、医師へのフィードバック(必要時)を記録

除外要件

  • 在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定している患者
  • 居宅療養管理指導費を算定している患者
  • 外来服薬支援料の対象患者

実務のポイント

  • 非対面(電話・ICT)での対応が可能なため、移動時間を削減できる
  • 残薬調整が見つかった場合は、医師への疑義照会を記録することで加算算定根拠を強化
  • 3ヶ月ごとのタイミング管理が必須(電子薬歴システムで自動アラート設定推奨)

2. かかりつけ薬剤師訪問加算(230点)

算定条件

  • 対象患者:服薬管理指導料1-イ、1-ロ、または2-イを算定している患者
  • 算定頻度:6ヶ月に1回まで
  • 実施内容:患者宅を訪問し、以下を実施
    • 残薬把握・整理(医師と協議のうえ、調整案を提案)
    • 服薬状況確認(飲み忘れ、飲み方の誤り等)
    • 医師へのフィードバック(必要に応じてトレーシングレポート作成)
  • 記録・証跡:訪問内容、患者の同意、医師との連携結果を電子薬歴に記載

除外要件

  • 在宅患者訪問薬剤管理指導料を既に算定している患者
  • 緊急訪問薬剤管理指導料を算定している患者

実務のポイント

  • 230点は比較的高点数(月に1〜2件実施で月収5,000〜10,000円増)だが、移動時間・ガソリン代・保険等を勘案して採算判定が必須
  • 在宅訪問とは異なり、「かかりつけ薬剤師訪問」は単一建物や多職種同時訪問を求めない(より少人数対応可)
  • 医師への報告書作成がセット要件であるため、電子版トレーシングレポート導入が推奨

従来との大きな変化:実績評価へのシフト

2024年改定から「かかりつけ薬剤師」の概念が変わり始めていましたが、2026年改定でさらに明確化されます。

視点 従来(2024年以前) 2026年以降
評価の基軸 「かかりつけ薬剤師」の報告義務 実際の対人実績(残薬調整、処方提案等)
点数確保の鍵 指導料の報告 服薬管理指導料1または2の算定 + フォローアップ/訪問の実績
証跡管理 簡略 電子薬歴での詳細記録が必須
医師連携 報告程度 疑義照会、トレーシングレポート作成が標準

施設基準(かかりつけ薬剤師資格要件)

新制度下で「かかりつけ薬剤師」として評価されるには、以下の要件を満たす必要があります。

薬剤師個人の要件

  • 小売薬局での勤務経歴:3年以上(または病院経歴と合算で3年相当)
  • 勤務時間:週31時間以上(パートタイムの場合は週24時間以上かつ月4日以上)
  • 連続雇用:6ヶ月以上(休暇期間を含む)
  • 認定:薬剤師認定制度機構等による認証研修の修了(または指定の研修受講)

薬局全体の要件

  • プライバシー確保:調剤カウンターに仕切りやプライベートスペースを設置
  • 医師連携体制:処方提案や疑義照会の記録システム整備
  • 地域連携:地域の医療・介護関係者との情報共有体制

新設項目との関連加算・新料金

2026年改定では、かかりつけ薬剤師機能を補完する以下の新規項目が同時に導入されます:

1. 服薬調整支援料(新設、令和9年6月施行)

  • 点数:1,000点(月1回まで)
  • 対象:高齢者多剤併用患者への減薬支援
  • 要件:老年薬学会の認定研修受講者が実施

2. 調剤時残薬調整加算(新設)

  • 点数:50点(処方提案が実施されたとき)/ 30点(その他)
  • 対象:残薬が確認された患者の次回処方時

3. 薬学的有害事象等防止加算(新設)

  • 点数:50点(処方提案が実施されたとき)/ 30点(その他)
  • 対象:相互作用、重複投薬防止等で医師と連携した場合

これらの加算と組み合わせることで、かかりつけ薬剤師機能の評価額を最大化できます。

経営シミュレーション

シナリオ:月当たり50名の対象患者、フォローアップ・訪問実績の月間想定

実績パターン 計算式 月増収 年増収
フォローアップ加算のみ(月10件) 50点×10件 = 500点 5,000円 60,000円
訪問加算のみ(月2件) 230点×2件 = 460点 4,600円 55,200円
両者併用(フォロー月10件+訪問月2件) 500点 + 460点 = 960点 9,600円 115,200円
調剤時残薬調整加算を含む場合 960点 + (50点×5件) = 1,210点 12,100円 145,200円

費用勘案

  • 移動費(訪問1件あたり):ガソリン300円~500円
  • 人件費(非対面フォローアップ):対応者時給1,000円×0.25時間 = 250円/件
  • 訪問加算の採算分岐点:230点(2,300円)> ガソリン400円 + 人件費500円 = 採算性あり

導入時の実務チェックリスト

Phase 1(4月):現状把握・届出判断

  • ☐ 現在の「かかりつけ薬剤師」報告状況を確認(何名、算定点数)
  • ☐ 対象となる薬剤師の認定資格取得状況をリスト化
  • ☐ 電子薬歴システムが「実績記録機能」に対応しているか確認
  • ☐ 医師との連携体制(疑義照会、トレーシングレポート送信手段)を確認

Phase 2(5月):体制構築・研修

  • ☐ かかりつけ薬剤師要件を満たさない薬剤師の認定研修申込
  • ☐ フォローアップ加算・訪問加算の対象患者リストを作成
  • ☐ 電話フォローアップの実施スケジュール(3ヶ月ごと)を設定
  • ☐ 訪問加算の実施(医師の同意取得、訪問スケジュール)に向けた準備

Phase 3(6月施行以降):運用・モニタリング

  • ☐ 毎月、フォローアップ・訪問実績を集計、増減収を確認
  • ☐ 電子薬歴への記録状況を確認し、請求漏れがないか確認
  • ☐ 医師からのフィードバックを集約し、連携効果を評価
  • ☐ 調剤時残薬調整加算との組み合わせで、さらなる増収機会を検討

税理士・経営アドバイス

重要ポイント

1. 従来との大きな違い:従来は「かかりつけ薬剤師の報告」が76点でしたが、2026年以降は「服薬管理指導料1または2の算定」が前提です。既に服薬管理指導料を多く算定している薬局は、フォローアップ・訪問加算で追加収入を獲得しやすくなります。

2. 実績管理の重要性:加算算定には「残薬調整が実施された」「処方提案を医師に報告した」といった証跡が必須です。電子薬歴の記録機能が不十分だと、請求できても監査時に減額リスクがあります。

3. 採算判定の観点:フォローアップ加算(非対面)は採算性が高いですが、訪問加算は移動費を考慮すると採算性が低い場合もあります。患者層(在宅医療が必要な患者が多いか否か)や薬局の立地(訪問時間が短いか)によって判断が必要です。

4. 医師連携の効果測定:加算取得だけが目的ではなく、「残薬減少率の向上」「多剤併用患者の減薬率」といった臨床効果を測定することで、継続的な医師連携が実現します。

参考資料・URL


執筆日: 2026年3月10日
改定施行日: 2026年6月1日

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