かかりつけ薬剤師機能体制加算の完全解説~フォローアップ加算・訪問加算の新評価と実装戦略~

2026年3月27日金曜日

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かかりつけ薬剤師機能体制加算の完全解説~フォローアップ加算・訪問加算の新評価と実装戦略~

改定の背景:かかりつけ薬剤師評価の大転換

2026年度調剤報酬改定におけるかかりつけ薬剤師制度の見直しは、調剤報酬全体の中でも最も大きな構造改革の一つです。これまで独立した点数体系であった「かかりつけ薬剤師指導料」(月450点)と「かかりつけ薬剤師包括管理料」(月750点)が廃止され、その機能が「服薬管理指導料」への統合と、実績に応じた新加算(フォローアップ加算・訪問加算)へ大きく再編されました。

この改定の背景には、従来のかかりつけ薬剤師評価制度が「算定回数のノルマ化」「定型的な打診」「形式的な同意取得」といった問題を招いていたことがあります。厚生労働省が2025年に実施した「薬局および医療機関における薬剤師の業務実態調査」では、56.8%の薬局がかかりつけ薬剤師指導料の算定回数をノルマとして管理していることが明らかになり、本来あるべき「患者が薬剤師を選ぶ」という関係性の構築を阻害していたのです。2026年改定は、この「ノルマの薬局」から「実績の薬局」へのパラダイムシフトを目指したものと言えます。

かかりつけ薬剤師指導料廃止と服薬管理指導料への統合

新しい点数構造

改定後、かかりつけ薬剤師の基本的な評価は、以下の通り服薬管理指導料に統合されます。

服薬管理指導料 1のイ(かかりつけ薬剤師が行った場合):45点(処方箋受付1回につき)。対象は、3月以内に再度処方箋を持参した患者です。これは従来の指導料とは異なり、処方箋を受け付けた都度の計算となり、月単位の固定評価ではなくなります。

服薬管理指導料 2のイ(かかりつけ薬剤師が行った場合):59点(処方箋受付1回につき)。対象は、1以外の患者(例えば初回患者、3か月以上処方が途絶えていた患者など)です。

重要なポイントは、かかりつけ薬剤師が行った場合とそうでない場合で、点数が全く同じだということです。つまり、かかりつけ薬剤師であることで加算される点数はなく、かかりつけ薬剤師には「フォローアップ加算」「訪問加算」という新しい加算による追加評価という形で、実績に応じた報酬体系が構築されたのです。

新加算①:かかりつけ薬剤師フォローアップ加算(50点)

定義と対象患者

かかりつけ薬剤師フォローアップ加算は、調剤後の継続的な状況確認と適切な指導を評価する新設項目で、50点(3か月に1回に限り)です。対象患者は、服薬管理指導料1のイ、2のイを算定している患者で、かつ以下の条件を全て満たす必要があります。

①外来服薬支援料1 ②服用薬剤調整支援料1・2 ③調剤管理料の調剤時残薬調整加算 ④薬学的有害事象等防止加算のいずれかを前回調剤時に算定している患者である。つまり、薬剤師が何らかの臨床的介入を行った患者に対して、その後の経過確認と指導を実施することで初めて加算対象となります。

算定のプロセスと要件

算定のトリガー:患者または家族の求めに応じて、前回の調剤後、当該患者が再度処方箋を持参するまでの間に、かかりつけ薬剤師が電話等により、服薬状況、残薬状況等の継続的な確認及び必要な指導等を個別に実施することが必須です。

重要な点は「患者の求めに応じて」という表現です。これまでのように、薬局から定型的に患者に電話するだけでは加算の対象にならず、患者側からの要望があるか、または患者との関係の中で継続的なフォローアップが自然に行われている状況が前提となります。

算定のタイミング:加算は、フォローアップの実施後、次回処方箋受付時に算定されます。つまり、電話による確認をした月の調剤で加算が算定されるのではなく、その後、再び患者が処方箋を持参したときの調剤で初めて加算が計上されるということです。

算定対象外となるケース

以下の患者については、フォローアップ加算の対象外となります。

調剤後薬剤管理指導料を算定している患者、在宅患者訪問薬剤管理指導料を算定している患者、居宅療養管理指導費(介護保険)のハ、介護予防居宅療養管理指導費のハを算定している患者。これらの患者は既に高度な在宅医療に組み込まれており、重複加算を避けるための規定です。

新加算②:かかりつけ薬剤師訪問加算(230点)

定義と対象患者

かかりつけ薬剤師訪問加算は、患者宅での直接的な薬学管理を評価する新設加算で、230点(6か月に1回に限り)です。対象患者は服薬管理指導料1のイ、2のイを算定している患者で、かかりつけ薬剤師が患家を訪問する状況にあることが必要です。

算定要件と実施内容

基本要件:患者または家族等の求めに応じて、かかりつけ薬剤師が患家に訪問して、以下の業務を行い、その結果を保険医療機関に情報提供した場合に加算を算定できます。

残薬の整理、服用薬の管理方法の指導、服薬状況の確認、医療機関への情報提供。30分程度の訪問で、薬剤師が実際に患者宅に赴いて、目視による残薬確認、患者と家族への直接指導、医師への具体的なフィードバックなどが実装される必要があります。

230点は、在宅患者訪問薬剤管理指導料(450点)と比べると低い評価ですが、短時間での対応が想定されており、調剤基本料が低い薬局でも着実に実績を積める設計になっています。

算定対象外となるケース

以下の患者については、訪問加算の対象外となります。

外来服薬支援料1、施設連携加算、在宅患者訪問薬剤管理指導料、服薬情報等提供料、居宅療養管理指導費(介護保険)のハ、介護予防居宅療養管理指導費のハを算定している患者。加えて、特別調剤基本料Aを算定している薬局が、感染対策向上加算の届出をしている医療機関へ情報提供を行った場合も算定できません。

かかりつけ薬剤師の資格要件と施設基準(大幅な緩和)

個別薬剤師の要件

かかりつけ薬剤師として認定されるために必要な個別要件は、以下の通りです。

①勤務経験:届出時点において、保険薬剤師として3年以上の保険薬局勤務経験がある。なお、保険医療機関(病院)の薬剤師としての勤務経験を1年以上有する場合、1年を上限として保険薬剤師としての勤務経験に含めることができます。これは2024年改定では認められていなかった緩和で、病院経験のある薬剤師の採用が容易になります。

②勤務時間(緩和):当該保険薬局に週31時間以上勤務している。なお、育児・介護休業法による時短勤務の場合は、週24時間以上かつ週4日以上の勤務で要件を満たします。従来は週32時間以上とされていたため、1時間の緩和となります。

③在籍期間(大幅な緩和):届出時点において、当該保険薬局に継続して6か月以上在籍している。従来は1年以上とされていたため、6か月の短縮は極めて大きな緩和です。なお、産前産後休業、育児休業または介護休業から復職する場合は、休業前の在籍期間を合算することができます。

④研修認定:薬剤師認定制度認証機構(CPC)が認証している研修認定制度等の研修認定を取得していること。日本薬剤師研修センター認定制度などが該当します。

⑤地域活動:医療に係る地域活動の取組に参画していること。具体的には、地域医療への貢献、健康相談会への参加、薬学出前講座など、多様な地域活動が想定されます。

薬局全体の施設基準(新設・重要)

2026年改定で新たに設定された施設基準として、薬局全体の体制要件が求められるようになりました。これは、単一の薬剤師ではなく、薬局組織全体の安定性を評価するものです。

①薬剤師配置:上記の個別要件を全て満たす保険薬剤師(派遣労働者を含み、休職中のものを除く)を配置していることが必須です。

②薬局の安定性(2つの選択肢のうち1つを満たす):

選択肢A(常勤薬剤師の平均在籍期間):当該保険薬局に勤務する常勤の保険薬剤師について、当該保険薬局の在籍期間が平均して1年以上であること。つまり、薬局全体の薬剤師チームの安定性が求められます。新入社員が多い薬局では達成困難な基準です。

選択肢B(管理薬剤師の在籍期間):当該保険薬局の管理薬剤師が当該保険薬局に継続して3年以上在籍していること。こちらは管理薬剤師一人の要件で、達成がより現実的です。

多くの薬局は選択肢Bの「管理薬剤師3年以上在籍」によって対応することが想定されます。

③プライバシー確保:薬学的管理等の内容が他の患者に聞こえないよう、パーテーション等で区切られた独立したカウンターを有するなど、患者のプライバシーに配慮していること。

同意取得手続きの大幅な簡素化

同意書廃止とお薬手帳への記載

2026年改定における最も象徴的な変更の一つが、かかりつけ薬剤師に係る「同意書」の廃止です。従来は、患者がかかりつけ薬剤師同意書に署名・押印することで、かかりつけ薬剤師関係が成立していました。しかし、改定後は書面の同意書そのものが不要となります。

新しい同意手続き:患者または家族等の同意を得た場合、その同意の事実をお薬手帳に記載します。具体的には、お薬手帳の該当ページに、かかりつけ薬剤師の名前と隣に「かかりつけ」の文字を記入し、患者の署名または家族からの確認メモを記載することで、同意の事実を記録します。

この変更により、以下の効果が期待されます。①同意書作成の業務削減 ②患者のアクセス障壁の低下(書類が不要になる) ③かかりつけ薬剤師関係がより柔軟で流動的になる可能性 ④患者自身がお薬手帳を見て、かかりつけ薬剤師を選ぶという関係性の明確化。

重要な注意:「同意がなくても算定可能」ではない

ただし、同意書が廃止されたからといって、患者の同意がなくてもかかりつけ薬剤師の評価が算定できるわけではありません。患者または家族等の同意を得ることは、相変わらず必須の要件です。同意の形式が「書面」から「お薬手帳への記載」に変わっただけです。

お薬手帳の提示が必須条件

改定後、かかりつけ薬剤師の算定には患者がお薬手帳を提示することが必須条件となります。改定前は「お薬手帳の有無は算定に直接影響しない」という解釈もありましたが、改定後は「手帳を提示した患者であって、継続的・一元的に服薬管理しているものに限る」という限定が明記されました。

つまり、以下のケースではかかりつけ薬剤師の評価は算定できません。

①患者がお薬手帳を持参していない ②お薬手帳には記載されているが、患者が薬局に提示しない ③患者がお薬手帳を所有していない

この要件により、薬局側には患者教育と手帳活用促進がさらに重要な業務となります。

未実施時の減算制度

2026年改定では、かかりつけ機能の実績がない薬局に対する減算制度が導入される方向で検討されています。具体的には、個別要件を満たすかかりつけ薬剤師を配置していても、実際の算定実績がない薬局については-13点程度の減算が想定されています。

これは「かかりつけ薬剤師の資格取得と実践の乖離」を解消する強いインセンティブとなります。つまり、資格を取得しただけでは不十分で、実際に患者との継続的な関係性を構築し、フォローアップや訪問の実績を積むことが求められるということです。

実装のための3つの重要課題

1.「患者の求めに応じて」の解釈と運用

新加算(フォローアップ加算・訪問加算)の最大のボトルネックは「患者の求めに応じて」という要件です。従来のように、薬局から一方的に患者に電話するだけでは加算の対象にならず、患者側からの主体的なニーズがあることが前提です。

運用上の課題は、この「求め」をどのように記録し、査定時に証明するかです。薬歴に「患者からの電話相談があり、服薬状況を確認した」と記載されていれば問題ありませんが、「薬局から定期的に患者に電話した」という一方的な記録では、査定の対象となる可能性があります。

実装戦略としては、患者との関係性を深め、患者側から「薬のことで相談したい」という自然な相談を生み出す営業努力が求められます。これは、従来のノルマ型アプローチから「信頼関係型アプローチ」への大きなパラダイムシフトを意味します。

2.お薬手帳の活用と患者教育

かかりつけ薬剤師の評価が、お薬手帳の提示に完全に依存するようになった以上、薬局側には従来以上に強い「手帳活用促進」の義務が生じます。

具体的な取り組みとしては、①初来局患者全員へのお薬手帳の配布と記入方法の説明 ②毎回の調剤時に手帳の提示を確認し、記入の重要性を継続的に啓発 ③手帳を忘れた患者への対応プロセスの構築(「次回は持参してください」だけでなく、スマートフォンアプリとの連動など)④患者向けの「お薬手帳活用の手引き」の作成。

3.フォローアップと訪問の実績積み上げ戦略

新加算の算定には実績が必須であり、かつ未実施時の減算が存在するため、薬局経営にとって「実績の確保」は死活的に重要です。

戦略的なアプローチとしては、①優先対象患者の設定:残薬が多い患者、多剤併用患者、高齢患者、新規処方患者など、フォローアップのニーズが高い患者を優先ターゲットとする ②早期関係構築:かかりつけ薬剤師関係を樹立する際に、初期段階から「今後、何かあったら相談してほしい」というメッセージングを強化 ③訪問の計画的実施:6か月に1回という制限があるため、計画的に患者を割り当て、実績を均等に積み上げる。

収益インパクトの試算

かかりつけ薬剤師制度の大転換による収益への影響は複雑です。

基本評価の変化:従来のかかりつけ薬剤師指導料(月450点)は廃止され、服薬管理指導料(処方箋1回あたり45点または59点)に統合されます。月1,000枚の処方箋を調剤する薬局の場合、月間の処方箋数によって算定額が変動します。

新加算による増収:フォローアップ加算(50点、3か月1回)と訪問加算(230点、6か月1回)が新たに追加されます。仮に月100人のかかりつけ患者がいて、そのうち20人がフォローアップを受け、5人が訪問を受けたと仮定すると、月間で(50点 × 20人 ÷ 3月 + 230点 × 5人 ÷ 6月)× 10円 ≈ 22,000円程度の増収が見込めます。

減収リスク:従来のかかりつけ薬剤師指導料の包括的点数が廃止されたため、実績がない患者については減収になります。加えて、未実施時減算(-13点)が導入されると、更なる減収圧力が発生します。

経営上の重要な気付き

2026年改定のかかりつけ薬剤師制度改革は、表面的には「点数が変わった」という改定ですが、本質的には「薬局の経営モデルの転換」を求めています。

従来の「ノルマ型」(毎月、何回かかりつけ薬剤師指導料を算定する)から「実績型」(実際に患者からの相談があり、フォローアップや訪問を実施した場合に初めて加算を算定する)への転換は、短期的には減収につながる可能性があります。しかし、長期的には、患者との信頼関係の構築、患者からの自発的な相談増加、他の加算(残薬調整加算、有害事象防止加算)との連動による総合的な増収効果を生み出す可能性があります。

この転換に成功できるかどうかが、2026年以降の薬局経営の分かれ目となるでしょう。

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