在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料

2026年3月13日金曜日

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在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料(2026年改定版)

改定の背景・基本方針

2026年度調剤報酬改定では、在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料について、在宅患者訪問薬剤管理指導料との連携がより一層強化されます。従来のオンライン対応は廃止され、対面訪問による緊急対応に一本化される方向性が示されています。同時に、定期訪問と緊急訪問の算定間隔がより柔軟に運用できるようになり、患者の状態変化に応じた迅速な薬学的介入が実現しやすくなります。

この改定の狙いは、在宅医療の現場で予期しない患者の状態悪化に対して、薬剤師が迅速かつ継続的に対応する体制を評価することです。特に末期がん患者や医療用麻薬を使用している患者など、急激な症状変化が起こりうる患者群に対して、薬学的管理の重要性がより一層強調されています。

点数体系と区分

区分 対象患者の状態 点数
指導料1 計画的な訪問薬剤管理指導に係る疾患の急変に伴う緊急対応 500点
指導料2 指導料1以外の場合(通常の緊急対応) 200点

区分のポイント

  • 指導料1(500点):既に定期的な在宅患者訪問薬剤管理指導の対象になっている患者が、その対象疾患の急変で緊急訪問が必要になった場合
  • 指導料2(200点):定期訪問の対象外の患者や、対象疾患とは関係ない急変による緊急訪問
  • 区分の判定は患者の定期管理疾患と緊急事態の関連性によって決まる

加算の種類と点数

加算名 内容 点数
夜間訪問加算 夜間(18時~22時)の訪問 400点
休日訪問加算 休日(日曜日、祝日)の訪問 600点
深夜訪問加算 深夜(22時~翌朝6時)の訪問 1,000点
麻薬管理指導加算 医療用麻薬注射剤の管理指導 100点
小児特定加算 15歳未満の小児患者への指導 450点
在宅中心静脈栄養法加算 TPN実施患者の管理指導 150点

算定上の重要な要件

1. 医師からの依頼が必須

算定要件

  • 主治医または連携する他の医療機関の医師から緊急訪問の依頼を受けたことが必須
  • 医師の指示がない場合は算定できない(患者や家族からの依頼のみではNG)
  • 依頼方法は電話、FAX、オンラインなど多様な形式に対応
  • 依頼内容(日時、理由、患者の状態)を記録・証跡に残す必要がある

2. 緊急訪問の実施

実施内容

  • 薬剤師が患者宅に緊急訪問し、対面で薬学的管理・指導を実施
  • 当該緊急事態に関連する症状、服薬状況、薬の副作用を確認
  • 必要に応じて薬剤を交付(処方箋がない場合でも可)
  • 医師の指示に基づいて処方変更の提案や疑義照会を実施

3. 訪問結果の報告が必須

報告内容

  • 訪問終了後、医師に訪問結果を文書(書面またはFAX)で報告することが要件
  • 報告書には、訪問日時、患者の状態、実施した指導内容、処方提案の有無を記載
  • 処方提案を行った場合は、医師の承認・却下の結果も記録
  • 報告のやり取りは電子薬歴に証跡として残す

算定回数の制限

患者区分 月間上限回数 特徴
一般患者 月4回 定期訪問と緊急訪問の合計
末期悪性腫瘍患者 週2回、月8回 症状変化が頻繁
医療用麻薬注射投与患者 週2回、月8回 用量調整が必要
中心静脈栄養法患者 週2回、月8回 栄養管理が繁雑

重要な注意点

  • 緊急訪問と定期訪問(在宅患者訪問薬剤管理指導料)の合計で月4回(高リスク患者は月8回)
  • 緊急訪問が頻繁に必要になる患者については、定期訪問への転換を検討すべき
  • 新興感染症患者(新型コロナ等)は計画的な定期訪問がない場合でも算定可能(特例)

2026年改定での主要な変更点

1. オンライン対応の廃止

従来は「在宅患者緊急オンライン薬剤管理指導料」が設定されていましたが、2026年改定で廃止される予定です。今後は、緊急対応は必ず対面訪問による実施が原則となります。

2. 定期訪問との連携強化

在宅患者訪問薬剤管理指導料の算定間隔が「中6日以上」から「週1回」に緩和されたことで、定期訪問と緊急訪問の組み合わせがより柔軟になります。例えば、定期訪問の直後に患者の急変があった場合でも、翌日に緊急訪問を実施できるようになります。

3. 加算の新設・見直し

小児特定加算(450点)の新設により、15歳未満の小児患者の緊急訪問がより高く評価されるようになります。

具体的な算定シナリオ

シナリオ1:末期がん患者の痛みの急変

項目 内容
状況 末期がん患者が定期訪問の翌日、オピオイド関連の副作用(便秘)で緊急訪問依頼
区分 指導料1(500点):がんの進行に伴う副作用管理が定期管理対象だから
実施内容 オピオイドの用量確認、下剤の追加検討、医師への提案
加算 麻薬管理指導加算100点(オピオイド投与患者だから)
合計点数 500点 + 100点 = 600点

シナリオ2:夜間の深夜訪問(医療用麻薬注射患者)

項目 内容
状況 麻薬持続注射療法を実施している患者が、深夜0時に注射ポンプの異常で緊急訪問依頼
区分 指導料1(500点):麻薬療法が定期管理対象だから
加算 深夜訪問加算1,000点 + 麻薬管理指導加算100点
合計点数 500点 + 1,000点 + 100点 = 1,600点

シナリオ3:小児患者の緊急対応

項目 内容
状況 10歳の小児患者が、中心静脈栄養の栄養液投与ラインの異常で夜19時に緊急訪問依頼
区分 指導料2(200点):緊急事態は栄養ライン問題で、通常の在宅管理疾患とは異なるから
加算 夜間訪問加算400点 + 小児特定加算450点 + 在宅中心静脈栄養法加算150点
合計点数 200点 + 400点 + 450点 + 150点 = 1,200点

在宅患者緊急時等共同指導料との違い

2026年改定では、新たに「在宅患者緊急時等共同指導料」が設定されます。これは医師と薬剤師が一緒に緊急訪問する場合の加算です。

項目 在宅患者緊急訪問薬剤管理指導料 在宅患者緊急時等共同指導料
訪問形態 薬剤師が単独で訪問 医師と薬剤師が同時に緊急訪問
点数 500点(指1)/ 200点(指2) 医科側に別途設定
使用場面 医師からの指示で薬剤師が緊急対応 医師の訪問診療に薬剤師が同行

実務上の重要な注意点

電子薬歴への記録義務

  • 医師からの依頼内容(日時、依頼理由、患者の状態)
  • 訪問実施日時
  • 実施した薬学的管理・指導の具体的内容
  • 医師への報告内容と報告日時
  • 使用した加算(夜間・休日・深夜等)の根拠

保険請求上の注意

  • 医師からの書面による指示・依頼が請求の根拠となる(電話依頼でも対応後に書面確認)
  • 訪問結果を医師に報告した書面(FAXなど)を保管しておくこと
  • 月4回(高リスク患者は月8回)の上限に注意。定期訪問との合計でカウント
  • 複数の加算を組み合わせた場合、それぞれの根拠を明確にする
  • 処方箋がない状況でも加算対象となるが、その理由を記録する

導入時の実務チェックリスト

Phase 1(4月):体制整備の確認

  • ☐ 24時間緊急対応体制が構築されているか確認
  • ☐ 薬剤師の当番制(オンコール)を明確にした表を作成
  • ☐ 医師からの依頼を受け付ける連絡先(携帯電話等)を整理
  • ☐ 訪問に必要な医療材料・薬剤を整備(応急処置キット等)
  • ☐ 定期訪問患者の診療情報(急変時の対応方針)を把握

Phase 2(5月):システム整備・スタッフ教育

  • ☐ 電子薬歴システムに「緊急訪問」の記録機能があるか確認
  • ☐ 医師への報告書様式を作成(FAX送信用)
  • ☐ 薬剤師スタッフに緊急対応の流れと記録方法を教育
  • ☐ 深夜・休日訪問の移動手段(車、バイク等)を確保
  • ☐ 医師や訪問看護ステーションとの連絡体制を構築

Phase 3(6月施行以降):運用・請求実務

  • ☐ 毎月、緊急訪問の件数(指1・指2別)を集計
  • ☐ 加算の適用状況(夜間・休日・麻薬管理等)をチェック
  • ☐ 医師との報告・相談内容をモニタリング
  • ☐ 定期訪問との月間回数の組み合わせが上限を超えていないか確認
  • ☐ 請求漏れがないか(特に複数加算の組み合わせ)

税理士・経営アドバイス

重要ポイント

1. オンライン廃止による運用変化:従来のオンライン対応が廃止されると、夜間・休日の緊急訪問が増加する可能性があります。特に深夜訪問(1,000点)は高い評価ですが、薬剤師の待機・移動負担が大きいため、人員配置計画に影響します。

2. 加算の組み合わせによる高額化:末期がん患者や麻薬注射患者の場合、基本点数(500点)に複数の加算(麻薬100点、夜間400点など)が追加されるため、1件の訪問で1,000点超になることもあります。採算性としては良好ですが、医学的妥当性の記録が重要です。

3. 定期訪問との合計管理が鍵:緊急訪問と定期訪問の月4回上限を厳密に管理する必要があります。緊急訪問が頻繁に発生する患者については、定期訪問への転換や訪問頻度の見直しを検討すべきです。

4. 医師連携の深化:在宅患者緊急時等共同指導料の新設により、医師との同時訪問が評価される仕組みになります。緊急対応の都度、医師と協議できる関係構築が重要です。

5. 人員配置コストの増加:24時間体制の構築、深夜対応の人件費増、移動費の増加などが見込まれます。緊急訪問の増収が、これらのコスト増を上回るかの検証が必須です。

参考資料・URL


執筆日: 2026年3月12日
改定施行日: 2026年6月1日
対象読者: 薬局経営者、在宅対応薬剤師、調剤事務スタッフ

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