電子的調剤情報連携体制整備加算

2026年3月17日火曜日

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電子的調剤情報連携体制整備加算(2026年改定版)

電子的調剤情報連携体制整備加算(2026年改定版)

背景・基本方針

2026年度調剤報酬改定では、医療DX推進戦略の重点化により、薬局における医療DX評価が「システム導入」から「実利用と患者安全への貢献」へと大転換します。

これまで薬局のDX対応を評価していた「医療DX推進体制整備加算(10点・8点・6点の3段階)」は廃止され、新たに「電子的調剤情報連携体制整備加算(8点)」として一本化されます。最大の改定ポイントは、「電子処方箋システムによる重複投薬・相互作用チェックの実施が施設基準に組み込まれた」ことです。これにより、薬局は単なる「電子処方箋の受け付け」ではなく、「電磁的記録を活用した薬学的な安全確認」を日常業務として実施することが求められるようになります。

電子的調剤情報連携体制整備加算の概要

点数体系(大幅な簡素化)

【2024年度(現行)】医療DX推進体制整備加算
加算1:10点(月1回限定)
加算2:8点(月1回限定)
加算3:6点(月1回限定)
※3段階の評価区分

【2026年度(改定後)】電子的調剤情報連携体制整備加算
一本化:8点(月1回限定)
※単一の点数体系

算定要件

基本的な考え方:電子的調剤情報連携体制整備加算を算定するには、従来の「オンライン資格確認」「電子レセプト請求」に加え、「電子処方箋を用いた薬学的チェック体制」が必須要件として新たに追加されました。

施設基準(12項目の詳細)

グループA:基本的なDX基盤整備(必須・変更なし)

項番 要件内容 実務レベル
電子レセプト請求を行っていること 調剤報酬請求を電子化。ほぼ全国の薬局で実施済み。
オンライン資格確認を行う体制を有していること オンライン資格確認システム機器の導入・運用。保険者との連携。
オンライン資格確認システムを通じて取得した診療情報を閲覧・活用し、調剤できる体制を有していること レセプト情報・特定健診情報・薬剤情報の閲覧機能を薬歴と連携。患者指導に活用。

グループB:電子処方箋の実利用(★新規必須)

項番 要件内容 実務レベル
電子処方箋を受け付け、調剤する体制を有していること。紙の処方箋も含めて、原則として全ての調剤結果を速やかに電子処方箋管理サービスに登録すること。 電子処方箋管理サービスへの接続。紙処方も含めた調剤情報の全件登録。処方箋受付から30分以内の登録が目安。
電磁的記録による調剤録・薬剤服用歴の管理の体制を有していること 電子薬歴システムの導入・運用。紙からの完全脱却。
【★新規】患者の服用する薬剤における有効成分の重複その他薬学的知見の観点から不適切な組合せの有無を電子処方箋システムにより確認する体制を有していること。 最重要。電子処方箋システムの「重複投薬チェック」「相互作用チェック」機能を日常的に運用。疑義照会時の根拠として活用。

グループC:情報共有サービス・セキュリティ(経過措置あり)

項番 要件内容 現況・経過措置
電子カルテ情報共有サービスを活用できる体制を有していること 当面の間、満たしているものとみなす。2026年冬頃に全国サービス開始予定。その後、速やかに導入する努力義務。
サイバー攻撃に対する対策を含めセキュリティ全般について適切な対応を行う体制を有していること 年1回以上の自己評価、外部脆弱性診断、スタッフ研修。インシデント対応マニュアルの整備。
マイナポータルの医療情報等に基づき、患者からの健康管理に係る相談に応じる体制を有していること 薬剤師による健康相談対応の体制整備。薬歴への記載。

グループD:マイナ保険証利用率(数値基準)

⑩ マイナ保険証利用率の基準

算定する月の3か月前のレセプト件数ベースで、マイナ保険証利用率が30%以上であること。

例)2026年7月に算定する場合 → 2026年4月のマイナ利用率を参照
ただし、③④⑧について、その前月または前々月のデータを用いることも可能。

注記:現在(2026年3月時点)のマイナ保険証利用率は全国平均で約25~30%です。30%基準到達には、患者教育・啓発が不可欠です。

グループE:掲示・周知(患者・社会への発信)

項番 要件内容 掲示内容と場所
以下の事項を薬局の見やすい場所に掲示していること イ)オンライン資格確認等システムを通じて診療・薬剤情報を取得・活用していること
ロ)マイナ保険証の利用促進等、医療DXを通じて質の高い医療を提供できるよう取り組んでいること
ハ)電子処方箋や電子カルテ情報共有サービス等、医療DXの取組を実施していること
⑪の掲示事項について、原則としてウェブサイトに掲載していること 薬局HPで医療DX対応状況を公表。患者の信頼獲得・集患効果。

重要な改定点:廃止される加算と新設される加算

医療情報取得加算の廃止

調剤管理料で算定していた「医療情報取得加算(1点/年1回)」は廃止されます。

廃止の理由:オンライン資格確認による情報取得が定着し、もはや「加算で誘導する段階を終えた」と判断。今後は、「取得した情報をどう活用したか」が電子的調剤情報連携体制整備加算や新設加算で評価される仕組みへ。

経営インパクト:年1点の減点。ただし、電子的調剤情報連携体制整備加算の8点(月1回)で相殺・上回る可能性が高い。

新設:薬学的有害事象等防止加算

加算名:薬学的有害事象等防止加算(点数は今後確定)

趣旨:電子処方箋システムを活用した重複投薬・相互作用チェックに基づき、実際に処方医へ疑義照会し、処方が変更された事例を評価する新加算。

対象となる介入例:

  • 電子処方箋の「重複投薬チェック機能」で検出された重複投薬について、医師に疑義照会 → 処方削減
  • 相互作用チェック機能で検出された相互作用について、医師に提案 → 用量調整や代替医薬品選択
  • 残薬と新処方の組み合わせによる「実質的な重複」を指摘 → 調整指示獲得

ポイント:「気づき」だけでなく、「医師への報告と処方変更の実績」が評価されます。電子処方箋システムのログ機能により、疑義照会の実績が自動記録される点が重要です。

実務上の最重要ポイント:電子処方箋システムの「重複投薬チェック」機能

何をチェックするのか

電子処方箋システムの重複投薬・相互作用チェック機能が備える項目:

  • 有効成分の重複:先発品と後発品の同時処方、同一成分の異なる剤型の同時処方(例:アスピリン錠+アスピリン散)
  • 相互作用:ワーファリン+NSAIDs、ACE阻害薬+カリウム利尿薬 等
  • 用量相互作用:治療域が狭い医薬品の重複(例:テオフィリン製剤×2)
  • 患者属性による禁忌:腎機能低下患者への特定医薬品、高齢者への特定医薬品 等
  • 残薬との組み合わせ:現在服用中の医薬品と新処方の相互作用・重複

システム運用で必要な設定

運用項目 実施内容 監査対応のポイント
チェック機能の有効化 電子処方箋管理サービスの重複投薬チェック・相互作用チェック機能を「有効」に設定 「手動で無効化されていないか」を監査で確認される可能性
結果の記録 チェック実施日時・検出された警告内容・対応(疑義照会/そのまま調剤)を薬歴に記載 「検出されたが何もしていない」は無視と判断され、監査指摘の対象
疑義照会の記録 チェック結果に基づき医師に照会した場合、その照会内容・回答内容を電子薬歴に保存 疑義照会の「根拠」が電子処方箋データであることが評価される
スタッフ研修 薬剤師全員がシステムの使用方法・チェック内容を理解。新入職時に必須研修 「スタッフが機能を知らない」状況は施設基準不適合と見なされる可能性

導入~届出~算定までの実務手順

Phase 1:現状診断(4月)
Phase 2:システム整備(5月~6月)
Phase 3:施設基準整備(5月~6月中旬)
Phase 4:届出(6月上旬)
Phase 5:実施・請求(6月~)

経営シミュレーション

現行から改定後の収益比較

薬局区分 月処方件数 現行
(医療DX推進体制整備加算)
改定後
(電子的調剤情報連携体制整備加算)
差分
増減
小規模 500件 10点 = 100円
(月)
8点 = 80円
(月)
-20円
(▲2点)
中規模 1,500件 10点 = 100円
(月)
8点 = 80円
(月)
-20円
(▲2点)
大規模 3,000件 10点 = 100円
(月)
8点 = 80円
(月)
-20円
(▲2点)
【注記】表面的には点数低下(10点→8点)ですが、以下の理由で実質的には改善:

医療情報取得加算の廃止(▲1点/年)の補完:新加算8点が月1回算定される仕組み

新設:薬学的有害事象等防止加算の収益効果
電子処方箋チェック → 疑義照会 → 処方変更という「実績」が評価される
月5~10件の疑義照会実績がある薬局では、点数を上回る加算が期待できる

マイナ保険証の利用率向上による診療報酬全体の底上げ
マイナ利用率30%達成は、患者の医療データ活用を促進
→ オンライン資格確認の「情報活用」が実際に起きる
→ 他の情報関連加算や適正処方の評価へ波及

システム投資と必要コスト

最小限の投資パターン

項目 内容 コスト感
電子薬歴システム機能追加 既存薬歴に「重複投薬チェック」「相互作用チェック」の手動チェック機能追加、または評価スイッチの有効化 0~50万円
電子処方箋管理サービスへの接続 ベンダーへの接続申請、システム設定。初期費用+月額費用 初期:10~30万円
月額:3~10万円
スタッフ研修 薬剤師・事務職員への操作研修。外部講師依頼 or ベンダー研修 0~30万円
掲示物・HP更新 内外掲示物作成、HP掲載。デザイン委託 or 内製 5~20万円
合計(最小) 15~130万円

投資回収期間の試算

【投資30万円の場合の回収期間】

薬学的有害事象等防止加算が月平均5件達成される薬局:
新加算(仮)20点 × 5件 = 100点/月 = 1,000円
30万円 ÷ 1,000円 = 300ヶ月 = 25年

※長期的には以下により改善:
・新加算点数の上方修正(歴年改定で増点可能性)
・マイナ利用率向上による他加算の獲得
・患者数増加(DX対応薬局として集患効果)

重要な注意点:マイナ保険証利用率30%の達成難度

現状と課題

2026年3月時点の全国マイナ保険証利用率は、全国平均で約25~28%程度です。30%基準を達成するには、以下の対策が必須です。

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