調剤ベースアップ評価料・調剤物価対応料

2026年3月14日土曜日

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調剤ベースアップ評価料・調剤物価対応料(2026年改定版)

調剤ベースアップ評価料・調剤物価対応料(2026年改定版)

背景・基本方針

2026年度調剤報酬改定では、診療報酬全体で+3.09%(令和8・9年度の2年度平均)の引き上げが決定されました。このうち賃金上昇対応が+1.70%、物価対応分が+0.76%となっています。保険薬局の調剤報酬改定率は+0.08%と限定的であるため、調剤報酬内に新たに「調剤ベースアップ評価料」と「調剤物価対応料」を新設して、職員の確実な賃上げと物価高騰への対応を支援する構造となります。

従来の診療報酬改定では、調剤基本料全体を引き上げることで対応してきましたが、2026年改定では、より個別・実績ベースで評価する仕組みへ転換しました。特に調剤ベースアップ評価料は、当該薬局の職員賃金改善の実績要件がある点で、過去の「包括的評価」から「実績重視」へのシフトを象徴しています。

調剤ベースアップ評価料の概要

点数体系

◎ 調剤ベースアップ評価料
基本点数:4点(令和8年3月~令和9年5月)
改定後点数:8点(令和9年6月以降:基本点数の200%)
算定対象:処方箋の受付1回につき

施設基準(届出要件)

調剤ベースアップ評価料の施設基準

1.基本要件

  • 当該保険薬局に勤務する職員が存在すること。常勤・非常勤を問わず、薬剤師・事務職員等が対象となります。
  • 対象職員の賃金改善を実施するにつき必要な体制が整備されていること

2.対象職員(詳細は厚労省通知で明示予定)

  • 40歳未満の薬局勤務薬剤師
  • 事務職員(全年齢)
  • その他参考職員(配置基準に含まれる者)

3.賃上げ水準の目安(令和8・9年度)

  • 薬剤師:ベースアップ+3.2%実現を想定
  • 事務職員:ベースアップ+5.7%実現を想定

算定ルール

項目 内容
算定期間 令和8年3月~令和9年5月:4点
令和9年6月以降:8点(200%)
算定方式 処方箋の受付1回につき1回の算定。月間上限なし。
併算定 調剤基本料と併算定可能。他の加算・減算と重複算定可。
届出 事前に地方厚生局長等に届け出る必要あり。
遡及適用 2026年6月1日以降に届出した場合、その翌月より算定可能。遡及は不可。

調剤物価対応料の概要

点数体系

◎ 調剤物価対応料
基本点数:1点(令和8年3月~令和9年5月、3月に1回限定)
改定後点数:2点(令和9年6月以降:基本点数の200%、3月に1回限定)
算定対象:処方箋を提出した患者に対して調剤した場合

算定ルール

項目 内容
算定期間 令和8年3月~令和9年5月:1点
令和9年6月以降:2点(200%)
算定方式 3月に1回限定。月1回の制限ではなく、年4回が上限。
算定対象 処方箋を提出した患者に対して調剤したすべての場合。
併算定 調剤基本料・調剤ベースアップ評価料と併算定可能。
届出 届出不要。全薬局が自動適用(届出不要型加算)。

⚠ 重要な注意点

「3月に1回」の制限は、カレンダー月単位ではなく、患者単位での3月間(90日)の算定間隔を意味する可能性があります。厚生労働省通知の正式版で詳細が明確になる予定です。薬局では電子薬歴システムで「前回算定日から3月経過確認」機能の設定が必須になります。

両加算の関係性・組み合わせ効果

調剤ベースアップ評価料と調剤物価対応料の違い

項目 ベースアップ評価料 物価対応料
趣旨 職員賃金改善の支援 物価高騰への対応
点数 4点(→8点) 1点(→2点)
算定頻度 処方箋1回につき毎回 3月に1回
施設基準 あり(賃金改善実績) なし(全薬局対象)
届出 必須 不要
R9.6以降 8点(2倍) 2点(2倍)

経営シミュレーション

月間処方箋数別の月次収益

【シナリオA:月間処方箋数1,000枚の薬局】

① ベースアップ評価料(4点×1,000枚)= 4,000点
② 物価対応料(1点×250枚※)= 250点
※3月に1回制限を月単位で按分すると、月間約250枚

月間合計 = 4,250点 = 42,500円
年間合計 = 510,000円

―――――――――――――――――――――

【シナリオB:月間処方箋数2,000枚の薬局】

① ベースアップ評価料(4点×2,000枚)= 8,000点
② 物価対応料(1点×500枚)= 500点

月間合計 = 8,500点 = 85,000円
年間合計 = 1,020,000円

―――――――――――――――――――――

【シナリオC:R9.6以降(点数200%に変更後)】

① ベースアップ評価料(8点×2,000枚)= 16,000点
② 物価対応料(2点×500枚)= 1,000点

月間合計 = 17,000点 = 170,000円
年間合計(R9.6~R10.3:10ヶ月)= 1,700,000円

施設規模別の年間収益効果

規模区分 月処方箋数 R8年度年間
(10ヶ月)
R9.6以降
月間
R9年度年間
(10ヶ月)
小規模薬局 500枚 212,500円 42,500円 425,000円
中規模薬局 1,500枚 637,500円 127,500円 1,275,000円
大規模薬局 3,000枚 1,275,000円 255,000円 2,550,000円
超大規模薬局 5,000枚 2,125,000円 425,000円 4,250,000円

職員給与への還元目安(月給35万円の場合)

ベースアップ実現額の目安

月給350,000円 × 3.2% = 11,200円/月
年間 = 134,400円(ボーナス含む)

中規模薬局(月1,500処方)の場合:
年間新規収益 = 1,275,000円
職員数6名への配分 = 212,500円/人(当然、他の経営改善分を除いた場合)

導入・届出の実務フロー

Phase 1:準備(2026年4月~5月)

Phase 2:届出(2026年5月~6月)

Phase 3:実施・請求(2026年6月~)

税理士・経営アドバイス

経営視点でのポイント

1.届出による実績要件とリスク

調剤ベースアップ評価料の届出後、厚生労働省は「実際に支給される給与(賞与を含む)に係る賃上げ措置の実績について詳細な把握を行う」と明記しています。つまり、届出時の計画だけでなく、実際の給与支給実績を検証される可能性があります。給与データの保管と従業員への周知が重要です。

2.物価対応料の「完全自動算定」のメリット

物価対応料は届出不要で全薬局に適用されます。ただし3月に1回という制限があるため、電子薬歴システムの設定ミスで算定漏れが生じやすい。処方管理システムの「3月以内の再算定チェック機能」を必ず確認してください。

3.令和9年6月の「200%倍増」への準備

R9.6より両加算が2倍になります。これは一時的な高収益期です。この期間を有効活用して、システム投資・在宅薬学加算の要件構築など、中長期的な経営強化に充てることをお勧めします。

4.給与還元とコンプライアンス

調剤ベースアップ評価料の趣旨は「職員賃上げ」です。薬局経営者が取得した加算収益を全額内部留保した場合、監査や報道リスクが生じます。年間増収の50~80%程度を職員給与へ還元する方針を事前に決定し、文書化しておくことが良いでしょう。

5.他の新加算・改定項目との組み合わせ

2026年改定では、バイオ後続品調剤体制加算(50点)、電子的調剤情報連携体制整備加算(8点/月)、在宅薬学総合体制加算の増点など、複数の新・改定加算があります。調剤ベースアップ評価料・物価対応料と併せて、複合的な収益構造を構築することで、薬局の経営安定性を大幅に高められます。

参考資料・URL

まとめ

調剤ベースアップ評価料と調剤物価対応料は、2026年改定における「職員賃上げ」と「物価高騰対応」の2本柱です。両加算は異なる趣旨・算定ルールを持つため、電子薬歴システムの正確な設定と定期的な請求確認が不可欠です。特に調剤ベースアップ評価料は「実績重視」の評価であり、給与実績の透明性がコンプライアンスリスク対策として重要になります。

月間処方箋数1,500枚の中規模薬局であれば、年間100万円超の新規収益が期待できます。この機会に、バイオ後続品調剤体制加算・在宅薬学総合体制加算と組み合わせた複合的な加算戦略を検討し、薬局の収益基盤を多層化することをお勧めします。

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